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新戸籍に移記される身分事項

転籍により記載される身分事項

転籍前の戸籍に載っている身分事項の中で、転籍により新戸籍に移記(記載)される身分事項は次のように施行規則で決まっています。

重要な身分事項の移記(戸籍法施行規則第39条)

新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者については、次の各号に掲げる事項で従前の戸籍に記載したものは、新戸籍又は他の戸籍にこれを記載しなければならない。

  • 一 出生に関する事項
  • 二 嫡出でない子について、認知に関する事項
  • 三 養子について、現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項
  • 四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
  • 五 現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項
  • 六 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
  • 七 日本の国籍の選択の宣言又は外国の国籍の喪失に関する事項
  • 八 名の変更に関する事項
  • 九 性別の取扱いの変更に関する事項
  • 2 前項の規定は、縁組又は婚姻の無効その他の事由によつて戸籍の記載を回復すべき場合にこれを準用する。

上記の認知・養子縁組の身分事項について、親側・子供側の転記され方を見てみます。

親側 子供側
養子縁組 養親の身分事項に記載された縁組事項は、戸籍が転籍その他の事由で編制替えになった場合には移記されません。 養子の身分事項に記載された縁組事項は、その後の戸籍に変動があっても養親と離縁しない限り移記されます。
認知 認知者(父親)の身分事項に記載された認知事項は、戸籍が転籍その他の事由で編制替えになった場合には移記されません。 被認知者(子)の身分事項に記載された認知事項は、転籍等の戸籍に編制替えや、婚姻、縁組等によって他の戸籍に入った場合、新戸籍または他の戸籍に移記されます。

ここで戸籍法施行規則第39条に記載れている身分事項の中で、認知・養子縁組・後見等をしたことがなく現在独身であれば、出生に関する事項だけが移記されることになります。

巷では、戸籍法施行規則を利用して、戸籍から離婚歴を消す方法というのが紹介されたりしています。
但しお子さんがいる場合は、お子さんの父・母の氏名が戸籍に記載されるため、転籍を行っても意味がありませんし、それにそもそもお子さんがいるわけですから・・・

戸籍から離婚歴を消す方法

結婚後に婚姻届を提出すると、一方が筆頭者、もう一方が配偶者になって夫婦の戸籍が新しく編成されます。
次に離婚すると配偶者は除籍され、名前の上に大きな×印が記載されます。
名前自体は消されずに、筆頭者の戸籍には誰といつ結婚したという記録が残ります。
離婚経験を俗にバツイチと言われているのも、この戸籍の×印に由来しております。

転籍の方法

除籍された配偶者が女性の場合、離婚届を出すと一旦は両親の戸籍に戻ります。
といっても戸籍が婚姻前の状態に戻るわけではありません。

婚姻して両親の戸籍から抜けたとき、子である自分の名前には×印がつけられています。
その×印の記録は消えずに、戸籍の末尾に新たに名前が追加されます。
そのため、離婚して戻ってきたことが一目でわかり、離婚歴として戸籍に残っている状態です。

次に両親の戸籍に戻った後、本籍地を現在の市区町村から他の市区町村に転籍した場合に限り、新しい本籍地の戸籍簿には離婚歴は引き継がれません(戸籍法施行規則第37条)。
つまり、自分の戸籍内にある離婚した相手についての記載や、親の戸籍内にある結婚前の自分についての記載が丸ごと消え、離婚歴がない戸籍になっているということです。

戸籍法施行規則第37条

戸籍法第百八条第二項の場合には、届書に添附した戸籍の謄本に記載した事項は、転籍地の戸籍にこれを記載しなければならない。但し、左に掲げる事項については、この限りでない。

  • 一 第三十四条第一号、第三号乃至第六号に掲げる事項
  • 二 削除
  • 三 戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項
  • 四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
  • 五 その他新戸籍編製の場合に移記を要しない事項

注意点

離婚歴を戸籍謄本から消すことはできても、以下の2つから完全に消すことはできない点に注意が必要です。

  • 原戸籍(改製される前の戸籍)
  • 除籍謄本(戸籍内の全員が除籍されたり転籍して、戸籍簿から除籍簿に移された謄本)

旧本籍地に今まであった戸籍は、除籍という形で80年保存され、その除籍にはいつどこへ本籍を移したかというのが記載されていて、新本籍地の戸籍には、いつどこから転籍してきたのかが記載されています。

あくまでも現在の戸籍には記載されていないだけで、過去に遡って除籍謄本を取れば、今までのことは記載されたまま残っています。
遺産相続時には戸籍を遡って親族・血縁関係を明らかにする必要があります。
そのため自治体は、原戸籍や除籍簿を保存して過去の身分関係を確認できるようにしているのです。

取得すべき戸籍の範囲

相続人確定のための取得すべき戸籍の範囲

相続人を確定させるための戸籍の範囲は誰が相続人になるかによって異なりますが、被相続人の出生から死亡までが記載された期間の戸籍謄本は最低限必要となります。

婚姻による戸籍の編成

現行法の戸籍謄本では戸籍に記載される在籍者は「一の夫婦及びこれと氏を同じくする子」ごとになるため、子供が結婚した場合には、子供は両親の席から外れ、その子どもあるいは配偶者を筆頭者とする新たな戸籍が作られ、これを戸籍の編成といいます。

他に戸籍の編成事由として、どのようなものがあるのでしょうか?

転籍

戸籍の本籍地を移転した場合、転籍先が他の市区町村であれば転籍先で新たな戸籍が編成され、これを転籍といいます。

改製

法律や命令により従前の戸籍が新しい戸籍に編成され、これを戸籍の改製といいます。

ここで戸籍の編成によって、転記されない戸籍の情報があることを見てみます。

編成事由 新しい戸籍に移記されない情報
婚姻の場合 従前の戸籍に記載されていた父母や兄弟姉妹の情報
転籍や改正の場合 従前の婚姻・養子縁組・死亡等により除籍された人の情報

以上のことから、死亡時点だけではなく、編成事由があるたびにそれらを遡って過去の戸籍まで取り寄せない限り、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は揃わないことになります。

戸籍調査の必要性

相続人を確定させるための戸籍調査の必要性

相続が発生した場合

  • 遺言書がある場合

    必ずしも相続人全員の同意が必要ではありませんが、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議をすることも可能となります。
    また遺留分などの確認する必要があるため、相続人の確認が必要となります。

  • 遺言書がない場合

    相続人で遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議書の作成の際には、相続人全員の同意が必要となります。

戸籍を揃えてみて初めて分かること

相続人が誰か」ということは、戸籍を揃えてみて初めて分かることがあります。

  • 被相続人の先妻に子供がいた場合
  • 生前に正妻以外の子供を認知していた場合
  • 未亡人が再婚した場合、連れ子と再婚した夫が養子縁組をしていた場合

被相続人の預金

被相続人の葬祭費などの支出や相続手続きを円滑に進めるために、被相続人の預金を引き出せるようにしておきたい事があります。
この場合相続人の代表が口座を開設して、預金残高を代表口座に移管する場合も、相続人全員の同意が必要となります。

戸籍の種類と記載事項

遺産分割協議を始めるにあたって、最初に相続人調査を行います。
なぜなら遺産分割協議は、共同相続人全員の意思の合致によりなされなければなりません。
したがって戸籍上判明している相続人を除外してなされた遺産分割協議は無効となります(昭和32年6月21日、家甲第46号、最高裁判所家庭局長回答)。

また、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされていますので(民法第990条)、包括受遺者を除外してなされた遺産分割協議も無効となります。

相続人から相続分を譲受けた者を除外してなされた遺産分割協議も無効と解されています。

相続人調査の基本は、被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集から始まります。
まずは戸籍の種類から見ていきます。

戸籍の種類

種類 概要
戸籍 現在有効な戸籍
除籍 本来の事由により閉鎖された戸籍
原戸籍 改正が必要となるような戸籍制度の大変革(形式・形状)に有効な使用中の戸籍の書換(改正)をした時の改正原戸籍

昭和の原戸籍

現民法に伴う書換(昭和33年4月1日~)

平成の原戸籍

コンピューター化に伴う書換(平成6年~)

戸籍の記載事項

  • 氏名
  • 出生の年月日
  • 戸籍に入った原因及び年月日
  • 実父母の氏名及び実父母との続柄
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • 夫婦については、夫又は妻である旨
  • 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • その他法務省令で定める事項