月別アーカイブ: 2016年10月

戸籍の種類と記載事項

遺産分割協議を始めるにあたって、最初に相続人調査を行います。
なぜなら遺産分割協議は、共同相続人全員の意思の合致によりなされなければなりません。
したがって戸籍上判明している相続人を除外してなされた遺産分割協議は無効となります(昭和32年6月21日、家甲第46号、最高裁判所家庭局長回答)。

また、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされていますので(民法第990条)、包括受遺者を除外してなされた遺産分割協議も無効となります。

相続人から相続分を譲受けた者を除外してなされた遺産分割協議も無効と解されています。

相続人調査の基本は、被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集から始まります。
まずは戸籍の種類から見ていきます。

戸籍の種類

種類 概要
戸籍 現在有効な戸籍
除籍 本来の事由により閉鎖された戸籍
原戸籍 改正が必要となるような戸籍制度の大変革(形式・形状)に有効な使用中の戸籍の書換(改正)をした時の改正原戸籍

昭和の原戸籍

現民法に伴う書換(昭和33年4月1日~)

平成の原戸籍

コンピューター化に伴う書換(平成6年~)

戸籍の記載事項

  • 氏名
  • 出生の年月日
  • 戸籍に入った原因及び年月日
  • 実父母の氏名及び実父母との続柄
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • 夫婦については、夫又は妻である旨
  • 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • その他法務省令で定める事項

タワーマンションによる節税

タワーマンションによる節税の検証

なぜタワーマンションなのか?

  • 節税の優位性
  • 換金性
  • 投資利回りの安定性
  • 遺産分割が可能
  • ブランド性

上記のタワーマンションによる節税が優位である理由について検証してみます。

節税性の優位性

『節税の優位性』で言われている各住戸の土地持分が小さいという理由ですが、一般的に集合住宅と言われるマンション等であれば、戸建てよりは優位であり、アパート経営のように賃貸すれば節税効果が得られ、特にタワーマンションだからというわけではありません。

換金性

『換金性』については、一般的に不動産そのものは換金性がよくない資産と言われています。まして高層階ほどプレミア価格で取引され、高い価格で買っている物件をあえて安く投げ売り価格で売却するのであれば換金性は高いかもしれませんが、通常は売却して換金するには時間を要するのが普通かと思います。

投資利回りの安定性

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『投資利回りの安定性』ですが、そもそも利回りと言うのは、
毎月の賃料×12/購入価格×100=表面利回り(%)
((毎月の賃料-毎月の費用)×12-固定資産税等の費用)/購入価格×100=投資利回り(%)
毎月の費用=管理会社に支払う費用+修繕積立金
固定資産税等の費用=公租公課(固定資産税+都市計画税)+損害保険料+その他費用

と言う式になり、高いプレミア価格で購入した場合の投資利回りは、通常は悪くなるものです。
さらに、今後日本の人口が減少していく状況を考えると、毎年満室であるとは想定できず、利回りは悪くなる方向かと思います。
また最近のニュースから、下記に掲載したように政府・与党では『高層階の固定資産税と相続税を引き上げる』ことを検討されているようで、さらに投資利回りは低下するかと思います。

遺産分割が可能

『遺産分割が可能』まで理由に挙げられると、言葉を失います。
相続人の数だけマンションを買い続けるのでしょうか?
これは換金性のところでも述べましたが、一般的に不動産そのものは換金性がよくない資産であり、遺産分割しにくい資産と言えます。

ブランド性

この中でタワーマンションにこだわる理由としては、「眺望」や「希少性」を理由とした『ブランド性』くらいかと思います。
ただし都会のタワーマンションでは、ツインタワーと称するマンションが建設されたりで、10年前とは比較にならないくらいタワーマンションが乱立してきており、20階以上のタワーマンションでも近隣のマンションからお部屋が丸見えだったりして、眺望とかプライバシーとかのブランド力もだいぶ弱くなってきていると思います。
アパート・マンション経営による相続税対策でも述べましたが、実需として住まない限りは投資物件として考えて購入するのが賢明かと思います。

また最近の裁判例から『賃借人の迷惑行為を放置した賃貸人の不法行為責任が認められた事例』として、『東京地判 平17.12.14』なんていうのもアパート・マンション経営では注目する事例です。

「タワマン節税」けん制、高層階は増税へ 18年以降の新築で政府・与党方針

政府・与党は20階建て以上の高層マンションについて、高層階の固定資産税と相続税を引き上げる。
2018年以降に引き渡す新築物件が対象。一方で低層階の税負担を軽くする。高層階の部屋は取引価格が高いわりに税金が安く、富裕層の間では節税策として購入する動きが広がっていた。

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菅義偉官房長官は24日の記者会見で「実際の取引価格を踏まえた固定資産税の案分方法をいま検討している。今後の税制改正で検討する」と述べた。政府・与党は12月にまとめる与党税制大綱に盛り込むことを目指す。国や市町村の税収は現行制度を適用する場合と変わらないようにする見通しだ。

対象は大都市圏で増える「タワーマンション」と呼ばれる超高層物件で、20階建て以上を想定している。上層階に行くほど景観がよくなるため、同じ面積でも取引価格が高い。
一方で、こうした物件の固定資産税や相続税の算定基準となる「固定資産税評価額」は、マンション1棟の評価額を部屋ごとの床面積で割って計算している。階層による差はなく、同じ面積なら最上階と1階が同じ評価額となり、固定資産税や相続税も原則同額になる。

資産評価システム研究センターが全国の新築高層マンションの分譲価格を調べたところ、最上階の床面積あたりの単価は最下層階より平均46%高かった。
この結果、マンション高層階の部屋を買えば、現金のまま相続するよりも、相続税の金額も抑えやすい。富裕層しか使えない節税策として批判が高まっていた。固定資産税も取引価格の割に安くすむ。

総務省が検討している新しい評価額の仕組みは、高層マンションの中間の階は現行制度と同じ評価額にする一方、中間階よりも高層の階では段階的に引き上げ、低層の階では段階的に引き下げる。評価額5000万円の建物にかかる固定資産税は単純計算で年70万円。5500万円になれば固定資産税は年77万円に増える。


新しい税制の対象は18年以降に引き渡す新築物件に限定する。既存の物件は今の税制を適用する。現在の税負担を前提に高層階を購入した住民から強い批判が出るためだ。
20階建て以上の高層マンションは建築規制の緩和により、1999年から関東、東海、関西の三大都市圏で急増。すでに全国で1200棟を超えている。15年に相続税が引き上げられて高層マンション節税の人気が高まったことから、今回対策に乗り出すことにした。

2016/10/25 0:36日本経済新聞 電子版

「タワマン節税」はや下火? 当局が対抗策

相続税の負担を減らす目的で高層のタワーマンションを買うタワマン節税。2015年1月の相続増税を機に需要がかさあげされ「相続税バブル」と評されたが最近は下火になりつつある。首都圏の今年1月のマンション契約率は7年半ぶりの50%台に沈んだ。国税庁と総務省の二段構えの節税策封じがきっかけだ。

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高層階の評価額は平均で実勢価格の3分の1どまり(大阪市内のマンション群)

「新規のタワーマンション購入は去年より減った。国の規制強化を心配したお客からたくさん電話がかかってくる」。東京の都心部でマンション売買を仲介する営業マンは浮かない顔だ。
不動産経済研究所(東京・新宿)によると、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で1月に売り出された新築マンションの契約率は58.6%と前年同月より16.3ポイント下がり、市況の好不調の境目とされる70%を2カ月続けて割り込んだ。
契約率を押し下げたのは20階以上のタワーマンションの低迷だ。1月の契約率は32.0%となり過去10年で最低を記録した。2月以降は持ち直し傾向だが、タワマンの契約率が90%を超していた昨年夏ごろとは様変わり。価格高騰に加え「節税に使いにくくなったことが影響した」(不動産業界関係者)。

タワマン節税のしくみはこうだ。相続税の計算では、1戸あたりの土地の持ち分が小さいマンションは実勢価格より大幅に安く評価される。特に眺望の良い高層階は実勢価格が高いにもかかわらず低層階と同じ基準で評価されるため節税効果が大きい。現金のまま相続するよりも税負担は格段に軽くなる。<br>
「タワーマンション節税」という言葉は不動産仲介を手がけるスタイルアクト(東京・中央)の登録商標だ。沖有人同社社長が14年に出したタワマン節税の指南書は昨年1月からの相続税の非課税枠縮小や最高税率の引き上げでヒット作になった。富裕層向けの節税セミナーには昨年1年間で約2000人が詰めかけた。
だが、沖氏でさえ最近はタワマン節税のセミナーで受講者を集めにくくなった。3月に東京・丸の内で開いたセミナーでは、空き地を高く売る方法など幅広い話題に触れる形にした。関西でも状況は同じ。大阪市内の不動産仲介会社の男性は「『相続税対策になる』とのうたい文句は控えるようにした」と言う。

市場を揺さぶる当局の税制の変化。発端は14年秋に国税庁がひそかに実施した調査だ。全国の20階以上の住戸343物件を調べたところ、評価額は平均で実勢価格のわずか3分の1。「行きすぎだ。看過できない」。分析にあたった松山清人資産評価企画官は昨年秋、全国各局の担当者を集めた。実勢価格と評価額が乖離(かいり)しているケースや取得、相続、売却の時期が不自然に近い場合は追徴課税するよう指示した。
昨年11月には総務省の関係団体が開いた固定資産税の制度改正を議論する有識者検討会で、委員の大学教授が提案した。「タワーマンションは階数で補正をかける方法もあるのではないか」

相続税の算定基準となる「評価額」は総務省令で定めている。現在はマンション1棟の評価額を各戸の所有者がそれぞれの床面積で均等に分割するため、階層や日当たりの条件によって差がつかず一律だ。同省はこれを高層階ほど評価額が上がるように見直す検討に入った。早ければ18年にも実施される見通しだ。
ただ、国税庁の指示は追徴課税するかの基準が曖昧で、総務省の制度改正も詳細が決まっていない。税制改正への警戒感が先行している段階だ。

スタイルアクトの沖氏は「ルールが多少変わっても節税になることに変わりはない」と指摘する。「早く明確にしてくれたほうがお客に売り込みやすくなる」と語る不動産大手の幹部もいる。
15年1月からの相続増税は、タワマン節税などの新手の節税策を生み出してきた。タワマン節税封じに納税者はどう動くか。攻防はヤマ場にさしかかった。(江渕智弘)

2016/3/30 3:30日本経済新聞 電子版