数次相続による相続税

配偶者の相続税額の軽減

配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。(相続税法19条)

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

この軽減措置を受ける注意としては、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象とはなりません。
ただし、相続税の申告書又は更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります。

配偶者の相続税の軽減措置は有利なのか?

例)死亡時の本人(夫)の相続財産10,000万円・妻の相続財産4,000万円、相続人は妻と子1人の場合

Kakeizu-6

一次相続

まず夫が死亡して、妻と子1人が相続した場合
妻と子の法定相続割合は、それぞれ50%となります。

  • 基礎控除の金額= 3,000万円+600万円×2= 4,200万円
  • 課税遺産額= 10,000万円-4,200万円= 5,800円
  • 各人の法定相続分= 5,800万円÷2= 2,900万円

    この時の税率15%、控除額は50万円

  • 各人の相続税= 2,900万円×15/100-50万円= 385万円
  • 相続税の総額= 385万円×2= 770万円

妻の相続割合における一次相続時の相続税(万円)

相続税の総額×按分割合=算出相続税となるので、相続税の総額770万円を妻と子の実際の相続割合で按分して、各々の相続税を算出します。

妻の相続割合 一次相続合計
相続財産 相続税 相続税 相続税
100% 10,000 0 0 0
90% 9,000 0 77 77
80% 8,000 0 154 154
70% 7,000 0 231 231
60% 6,000 0 308 308
50% 5,000 0 385 385
40% 4,000 0 462 462
30% 3,000 0 539 539
20% 2,000 0 616 616
10% 1,000 0 693 693
0% 0 0 770 770

二次相続

次に妻が死亡して、子1人が相続した場合

  • 基礎控除の金額= 3,000万円+600万円×1= 3,600万円
  • 課税遺産額= 夫からの相続額+4,000万円-3,600万円
概要 改正後
1000万円以下 10%(控除額 0万円)
3000万円以下 15%(控除額 50万円)
5000万円以下 20%(控除額 200万円)
1億円以下 30%(控除額 700万円)
2億円以下 40%(控除額 1,700万円)

妻の相続割合における二次相続時の相続税(万円)

  • 2次相続税額= 課税遺産額×相続税率/100-控除額
  • 数次相続税額= 1次相続税額+2次相続税額
妻の相続割合 一次相続税 二次相続 相続税合計
相続財産 課税遺産額 相続税率 控除額 相続税
100% 0 14,000 10,400 40% 1,700 2,460 2,460
90% 77 13,000 9,400 30% 700 2,120 2,197
80% 154 12,000 8,400 30% 700 1,820 1,974
70% 231 11,000 7,400 30% 700 1,520 1,751
60% 308 10,000 6,400 30% 700 1,220 1,528
50% 385 9,000 5,400 30% 700 920 1305
40% 462 8,000 4,400 20% 200 680 1,142
30% 539 7,000 3,400 20% 200 480 1,019
20% 616 6,000 2,400 15% 50 310 926
10% 693 5,000 1,400 15% 50 160 853
0% 770 4,000 400 10% 0 40 810

数次相続による相続税

配偶者の相続税額が軽減されたとしても、数次相続では節税したことにならない

上記の例は、夫が亡くなり妻と子供が相続した後、妻が亡くなり子供1人が相続する場合の数次相続の相続税のシミュレーションです。
上記の表より数次相続による相続税の合計額としては、妻と子供が相続する時に必ずしも配偶者の相続税額の軽減を利用したとしても、数次相続した場合の相続税額として有利にならないことが分かります。

ただ上記の例では、夫が死亡してから妻が死亡するまでの間で、贈与を行うなどの相続税対策を考慮しておりませんので、これらの相続税対策を行うことで、配偶者の相続税額の軽減を利用することも有効な手段となる場合も有ります。
男性と女性の平均寿命や、各家庭におけるさまざま事情を考慮し、1次相続における適正割合を決められることが数次相続による相続税の節税には有効となります。