カテゴリー別アーカイブ: 贈与

生活費及び教育費の贈与

従来からの非課税規定

贈与税の非課税財産(相続税法21条の3)

  • 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。

    一 法人からの贈与により取得した財産
    扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
    三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

  • 以下略

扶養義務者(民法877条)

  • 1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
  • 2.家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
  • 3.前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

親が子供や孫の生活費・教育費を支出しても、扶養義務者への贈与税は非課税となります。
また別枠で毎年110万円贈与することができ、これも非課税となります。

扶養義務者からの生活費及び教育費の贈与

これらの扶養義務者に対する贈与税の非課税枠を利用して、本人と同居している子の長男夫婦家族への生活費及び教育費の贈与について考えてみます。

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  • 1.本人と同居している長男夫婦が支払うべき生活費及び教育費として、月30万円を負担します。
    毎年360万円・10年間で3600万円で無税で贈与できます。

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  • 2.長男及び嫁・孫・長女・次女の計5人に対して毎年110万円を贈与します。
    毎年550万円・10年間で5500万円で無税で贈与できます。

  • ya

  • 3.上記の贈与を組み合わせると、毎年(360万円+550万円=910万円)を無税で次世代の相続人に承継させることが出来ます。
    したがって10年実行すると9,100万円、20年実行すると1億8,200万円が非課税となります。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、30歳未満の方(以下「受贈者」)が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(祖父母など)から以下の要件のときに、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

  • 信託受益権を付与された場合
  • 書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合
  • 書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合(以下「教育資金口座の開設等」といいます)

この制度を利用するには、上記のような教育資金口座の開設等が必要となります。
また教育資金の支払いを行った場合は、金融機関等の営業所等に領収書等の提出を行う必要があります。

教育資金贈与の非課税制度のパンフレット

贈与契約と暦年贈与信託

贈与の定義

贈与(民法549条)

  • 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

    片務・諾成・無償の契約

贈与は片務契約であり、同時履行の抗弁権(民法533条)などの双務契約に関する適用はありません。
贈与は諾成契約なので、口約束でも有効となりますが、「書面によらない贈与」は当事者はいつでも履行されていない部分のみ撤回が可能となります。
撤回により契約は遡及的に無効となります。

暦年贈与信託

暦年贈与信託契約の場合、贈与者から「贈与の依頼書」を提出して頂くことで「書面による贈与」となり贈与者の方から一方的に撤回することができなくなります。
また受贈者から「受贈の確認書」を頂くことで、「片務契約」として有効となります。

暦年贈与信託の特長に「贈与契約書の作成や振り込みなどの、面倒な贈与手続きは不要」と記載されたりしているものがありますが、実は見て頂くとわかるとおり簡易的に手続きを踏んでいる形になっています。

  • 同時履行の抗弁(民法533条)

    双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

連年贈与と暦年贈与信託

連年贈与の怪

国税庁のタックスアンサー

ずいぶん前のことですが、毎年定期的に贈与(連年贈与)し続けると遡って贈与税が課税されるような事を税理士さんに聞いたことがありました。
その元ネタは、国税庁のタックスアンサーだったようです。

  • Q1「毎年、子に100万円ずつ10年間にわたって贈与することとしましたが、1年間では基礎控除額である110万円以下となるため、贈与税の申告納税は不要ですか。」

    A1「1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、契約をした年分に、有期定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税の申告が必要となります。」(相法24、相基通24-1)
    国税庁のタックスアンサー

有期定期金に対する贈与と判断されると

平成26年から5年間、毎年4月1日に100万円ずつ贈与していた場合を例としてみてみます。

  • 単年度で見ると
  • 基礎控除【110万円以下】なので、贈与税なし。

  • 有期定期金の贈与
  • 平成26年4月1日に500万円の贈与契約があり、それの5年間の分割払いと判断されると、
    有期定期金500万円に対する贈与税として、平成26年に一括で53万円の支払いとなる。

このように有期定期金と判断されないように、毎年贈与系契約を作成しましょう!

以前に税理士さんからは、連年贈与に見られないように毎年贈与額を変更するか、時々110万円を超えて申告して下さいとアドバイスされましたが、例えば行政書士に毎年贈与契約書を作成して頂き、双方の署名押印とその行政書士による検印等で証書を残し、かつ現実に銀行振り込みで証拠を残す方が確実かと思います。

最近の金融機関の商品

ここで最近の金融機関の商品を調べてみると、贈与手続きを代行して年間110万円までの贈与税の非課税枠を利用した商品が提供されていました。

暦年贈与信託「おくるしあわせ」(三菱UFJ信託銀行)

  • 贈与契約書の作成や振り込みなどの、面倒な贈与手続きは不要。(※1)
  • 贈与取引の記録が残ります。複数の方への贈与や複数年にわたる贈与などの場合も安心です。(※2)
  • 毎年当社からお知らせするので、贈与の機会を忘れることはありません。
  • 元本保証:元本に万一欠損が生じた場合も当社が補てんします。
  • 管理手数料無料:ご契約時やご契約後の管理手数料は無料です。

    暦年贈与信託「おくるしあわせ」

この商品の特徴を見てみると、前述の「連年贈与は贈与税が遡って課税」される話は?と不思議に思って調べてみました。

連年贈与対策

調べていくと、国税庁のタックスアンサーに書いていた話を誤って解釈した人達が「連年贈与は贈与税が遡って課税」のフレーズを一人歩きさせていた!?と言う内容の記事が目に入ってきました。

塩川税理士事務所の連年贈与の誤解(なぜ皆が間違えているんだろう)
» くわしくはコチラ

さらに読んでみると「毎年の判断で法的に有効な贈与を行えば、結果的に同時期同額であってもその都度の贈与契約となるのでこれを連年贈与として課税されることはない」という事が書かれていました。

  • 毎年の判断

    毎年贈与契約をする。(※3)

  • 有効な贈与

    贈与契約書を作成して双方が署名捺印を行う。(※4)
    受贈者が、贈与財産を管理する。

確かにこれらの連続贈与対策についても、かつて税理士さんに同じようなアドバイスを受けた事がありました。
ここで改めて上記の暦年贈与信託の特長の※1の「贈与契約書の作成は不要」という点に注目すると、連年贈与対策として有効だと言われていた※3の「毎年贈与契約する」、※4の「贈与契約書を作成する」と言った手法は、実は不要だったのでは?と言う新たな疑問が出てきました。
もちろん※2により、暦年である契約には間違いはありません。
前述の「国税庁のタックスアンサー」の例と何が違うのでしょうか?

暦年贈与信託

三菱UFJ信託銀行「おくるしあわせ」の専用窓口に問い合わせてみたところ、次の事が分かりました。

  • 毎年の判断

    毎年贈与する方に「贈与の依頼書」にて贈与したい方と贈与額を確認を行う。

  • 有効な贈与

    贈与を受ける方から「受贈の確認書」を頂く。
    受贈者が、贈与財産を管理する。

暦年贈与信託は、贈与する側の口座から贈与を受ける口座へ財産贈与する手続きを、第3者である信託銀行が手助けをしているといった商品であることが分かります。

また暦年贈与信託の「おくるしあわせ」の<本商品における税務上のご留意事項>に「贈与する方と贈与を受ける方との間であらかじめ約束されている場合は、贈与税の申告が必要となります。」と記載されているとおり、贈与者と受贈者の間で予め契約等を交わさない事が重要です。
連年贈与として扱われない重要なポイントとなります。

暦年贈与信託は、信託銀行である第3者を介在させて、毎年贈与者と贈与額を決め、受贈者に確認し、通帳等で贈与の記録が残るようにし、贈与者と受贈者の間で予め贈与契約をしていなければ、連年贈与と受けれらにくい工夫している商品というがわかります。

さらに税理士法人の見解と東京国税局の回答も得るあたり、流石だと感じました。

ただ私は信託銀行を使わなくても、似たような仕組みは個々の事例に合わせて対応できるのかと考えています。
その仕組みは、後日の機会にでもアップしたいと思います。

※この内容は平成26年2月現在のもので、今後の税制改正や今後確定する法令や通達等により、異なる課税関係が生ずることがあります。
※行政書士である私は一般的な税務の話しか出来ませんので、個別の具体的な税務上の取り扱いの詳細は、相続税に詳しい税理士さんや所轄税務署などにご確認ください。