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緩和された財産目録

自筆証書遺言の書式

約40年ぶりに相続法の一部が見直され、自筆証書遺言を書く負担が軽減されました。
今回、財産目録についてパソコン等で作成することが出来るようになったメリットを生かせられるような自筆証書遺言の書式を考えてみたいと思います。

民法968条からの要件

まず、民法968条の条文から自筆証書遺言に記載する要件を確認します。

  • 全文

    →以下「遺言書を書く時の注意点」の項を参照

  • 日付

    →「吉日遺言」などは無効で、特定の年月日を明示が必要
    複数の遺言書が発見された場合、遺言書の先後により効力を判別するため

  • 氏名・押印

    →「遺言者の同一性及び真意の確保」と「文書の完成を担保」するため、遺言作成者の署名・押印が必要
    花押は押印と同視することはできず、押印としての要件を満たさないため

遺言書を書く時の注意点

次に、遺言書に書く際の注意点ですが、曖昧な表現を使わず具体的に書き、以下のように特定させることが大切です。

  • 遺言者

    →誰の遺言書であるか、特定させる

  • 相続人

    →誰に相続・遺贈させるか、特定させる

  • 不動産

    →登記簿謄本通りに正確に、不動産が特定できるよう記載する

  • 預貯金

    →金融機関名、支店名、預貯金の種類や口座番号まで、金融資産が特定できるように記載する

  • 遺留分

    →相続人の遺留分についてもよく配慮する

  • 遺言執行者

    →遺言による遺産分割をスムーズに進める為にできれば遺言書で遺言執行者を指定しておく

全文を書く時の注意点

hanko_natsuin_man

今回の相続法の改正で、パーソナル法務事務所がおススメする書式は、財産目録の一覧を種目ごとに分け、その中をさらに相続・遺贈させたい人ごとに相続財産を列記する方法です。
そして分けられた相続財産ごとにラベル(見出し)をつけて、遺言書を書くという方法です。

このラベル(見出し)も工夫して、相続人A、Bに対して、不動産と金融資産をそれぞれ相続させるといった遺言書を書く場合、例えば「不-A」「不-B」「金-A」「金-B」といった「財産目録の種別」、「相続人」若しくは「相続人のイニシャル」等で区別が分かるようなラベル名をつけて、パソコンで財産目録を記載します。

財産目録の一覧をラベルごとに分けてパソコンで作成することで、手書きの本文を簡素に書くことが可能となります。
これにより将来、相続させたい財産目録を書き換えたい場合、財産目録の一覧をパソコンで修正するだけで可能となります。
手書き部分を修正する必要はありません。

遺言書のサンプル

手書きの本旨部分

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パソコンで書いた財産目録

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上記の遺言書のサンプルでは、手書きの部分の本旨から、遺言者Xから相続人Y、相続人A、相続人Bへ相続財産が以下のように遺言されています。

  • 相続人Y

    →不-Y、金ーY

  • 相続人A

    →不-A、金-A

  • 相続人B

    →不-B、金-B

それを、財産目録の一覧の中身をパソコンで書き換えるだけで、誰にどの財産を相続させるかを簡単に修正することが出来ます。

法務省のサンプル

法務省が定めるガイドラインからすると、通帳のコピーと言った画像データでもよいのであれば、不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を画像データとしてスキャナーで読み込み、差し込み画像としてファイル化すると、不動産の登記事項の書き写し漏れもなくなります。

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自筆証書遺言の方式の緩和

自筆証書遺言(民法968条)

  • 1.自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
  • 2.前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない
  • 3.自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

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改正前は、自筆証書遺言の方式で遺言書を書くと、遺言書の全文を自書する必要があり、財産目録も全文自書しなければならなく、遺言者の負担が大きいものでした。

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改正後は、財産目録についてはパソコン等で作成することが出来るようになりました。
パソコンで作成した財産目録の各頁については、署名押印をする必要がありますが、手書きで作成する必要がなくなりなり、大幅な負担の低減となりました。
財産目録以外の個所については、今まで通り手書きとなりますので、ご注意ください!

全文、日付及び氏名を自書

民法968条1項により、遺言者が、全文、日付及び氏名を自書しないといけません。
ただし、改正後民法968条2項により、繰り返しますが財産目録についてはパソコン等で作成することが出来るようになりました。

次に日付についてですが、遺言書には必ず遺言をした日付、特定の年月日を明示する必要があります。

民法1023条(前の遺言と後の遺言の抵触等)

  • 1.前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
  • 2.前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

この民法1023条の条文から複数の遺言書が発見された場合、どちらの遺言書が先か後かを判別する必要があり、それによりどちらに効力があるかを判別することになるからです。
そのため、日付を特定する必要があるため、日付が特定できない吉日遺言(昭和41年7月吉日)といった遺言は無効となるため、注意しましょう。
容易に判明できる日付の誤記で無効ではないとされた判例もありますが、原則的には誤記にも注意しましょう!

日付・氏名・自書に関する判例

  • 日付の誤記

    →自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であることおよび真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。(最判昭52年11月21日家裁)

  • 吉日遺言

    →自筆遺言証書の日付として「昭和41年7月吉日」と記載された証書は、本条一項にいう日付の記載を欠くものとして無効である。(最判昭54年5月31日民集)

  • 氏名

    →本条にいう氏名の自書とは遺言者が何人であるかにつき疑いのない程度の表示があれば足り、必ずしも氏名を併記する必要はない。(大判大4年7月3日民録)

  • カーボン紙

    →遺言の全文、日付および氏名をカーボン紙を用いて複写の方法で記載することも、自署の方法として許されないものではない。(最判平5年10月19日判事)

  • 添え手

    →自筆証書遺言につき他人の添え手による補助を受けた場合、遺言者が他人の支えを借りただけであり、かつ、他人の意思が介入した形跡がない場合に限り、自書の要件を充たすものとして有効である。(最判昭62年10月8日民集)

印を押さなければならない

遺言書に押印が必要な理由については、遺言無効確認請求事件(平成元年年2月16日)の最高裁の判例から確認してみたいと思います。

遺言無効確認請求事件(平成元年年2月16日)

  • 遺言無効確認請求事件

    →自筆証書遺言の方式として自書のほか押印を要するとした趣旨は、遺言の全文等の自書とあいまつて遺言者の同一性及び真意を確保するとともに、重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによつて文書の作成を完結させるという我が国の慣行ないし法意識に照らして文書の完成を担保することにあると解されるところ、右押印について指印をもつて足りると解したとしても、遺言者が遺言の全文、日附、氏名を自書する自筆証書遺言において遺言者の真意の確保に欠けるとはいえないし、いわゆる実印による押印が要件とされていない文書については、通常、文書作成者の指印があれば印章による押印があるのと同等の意義を認めている我が国の慣行ないし法意識に照らすと、文書の完成を担保する機能においても欠けるところがないばかりでなく、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえつて遺言者の真意の実現を阻害するおそれがあるものというべきだからである。
    もつとも、指印については、通常、押印者の死亡後は対照すべき印影がないために、遺言者本人の指印であるか否かが争われても、これを印影の対照によつて確認することはできないが、もともと自筆証書遺言に使用すべき印章には何らの制限もないのであるから、印章による押印であつても、印影の対照のみによつては遺言者本人の押印であることを確認しえない場合があるのであり、印影の対照以外の方法によつて本人の押印であることを立証しうる場合は少なくないと考えられるから、対照すべき印影のないことは前記解釈の妨げとなるものではない。

この判例から押印を要する趣旨は、「遺言者の同一性及び真意の確保」と「文書の完成を担保」となります。

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これは例えば、不動産の売買契約において、捺印契約者本人が購入、売却する意思がしっかりとあることを確認するために不動産売買契約書に実印での押印を要求する趣旨と同じで、他者が勝手に遺言書を書いていないか、遺言者者本人が遺言する意思が本当に存在するのかの証明のために必要となります。

条文や判例では、実印での押印までは求められていませんが、状況によっては、本人の意思とは関係なく他人が押印したものとして、遺言の効力が争われることもあります。
その場合でも実印を押しておけば、遺言の効力が問題になったときにでも、遺言書は有効であると判断される可能性が高くなるため、紛争防止の観点からも実印での押印をおすすめします!

印に関する他の判例

  • 英文遺言の押印

    →遺言者の署名が存するが押印を欠く英文の自筆遺言証書につき、遺言者が帰化した人であることなどの事情を考え、有効とした。(最判昭49年12月24日民集)

  • 封印

    →遺言書本文を入れた封筒の封じ目にされた押印をもって、本条一項の押印の要件に欠けることころはない。(最判平6年6月24日家裁)

  • 花押

    →花押(かおう)を書くことは、印章による押印と同視することはできず、本条一項の押印の要件を満たさない。(最判平28年6月3日民集)

相続に関するルールの変更

相続法改正と遺言書保管法の制定

2018年(平成30年)7月に、約40年ぶりに相続法の一部を見直しを内容とする「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」と、法務局において遺言書を保管するサービスを行うこと等を内容とする「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立したことで、2019年1月13日(平成31年)から段階的に相続に関するルールが変更されます。

2019年1月13日施行

2019年7月1日施行

  • 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
  • 預貯金の払戻し制度の創設
  • 遺留分制度の見直し
  • 特別の寄与の制度の創設

2020年4月1日施行

  • 配偶者居住権の創設

2020年7月10日施行

  • 法務局における自筆証書遺言の保管制度の創設(遺言書保管法)

ここで注意すべきことは、法務局における自筆証書遺言の保管制度を利用する場合、法務省令で定める様式で書く必要があるのですが、具体的な様式については施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなっており、現時点(2018年12月28日)では様式は不明のため、後に保管制度を利用する場合はご注意ください。

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また遺言書の保管の申請、遺言書の閲覧請求、遺言書情報証明書(遺言書の画像情報等を用いた証明書)又は遺言書保管事実証明書(法務局における遺言書が保管されているかどうかを証明した書面)の交付の請求をするには、手数料を納める必要がありますが、その具体的な手数料の額についても施行日(2020年7月10日)までの間に定めることとなっています。

判例変更:預貯金も遺産分割の対象となる

最大決平成28年12月19日

最高裁大法廷は、平成28年12月19日預貯金と遺産分割に関する重要な決定を下しました。

判示事項

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共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるのか?

裁判要旨

共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる。

判断の理由

  • (1)「遺産分割においては被相続人の財産をできる限り幅広く対象とするのが望ましく、また、遺産分割手続を行なう実務上の観点からは、現金のように評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産を遺産分割の対象とすることに対する要請も広く存在する。…具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産であるという点において…預貯金が現金に近いものとして想起される。」
  • (2)「普通預金債権及び通常貯金債権は共同相続人全員に帰属する…ところ、…上記各債権は口座において管理されており、預貯金契約上の地位を準共有する共同相続人が全員で預貯金契約を解約しない限り、同一性を保持しながら常にその残高が変動しうるものとして、存在し、各共同相続人に確定額の債権として分割されることはないと解される。」
  • (3)「定期貯金についても、…契約上その分割払戻しが制限されているものと解される。」

従来の判例

従来は、当事者間において預金債権について遺産分割の対象とする合意がある場合を除き、預金債権については、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、各共同相続人の分割単独債権となると判事していたため、遺産分割手続の対象とはならないこととされていました。
以下、昭和29年判決と平成16年判決を示します。

最判昭29.4.8、民集8-4-819

相続財産中の可分債権は法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。

最判平16.4.20、集民214-13

相続財産中に可分債権があるときは、その債権は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されて各共同相続人の分割単独債権となり、共有関係に立つものではないものと解される。

関連する重要判例

(旧)郵便局定額貯金 最平22.10.8判決

定額郵便貯金債権は、相続開始と同時に当然に分割されることなく、その最終的帰属は遺産分割手続によって決定される。」これは、(旧)郵便局定額貯金については、据置期間の定めがあることや、その据置期間中には分割払戻しをしないとの条件で預入れていること等の契約の特殊性を考慮しているものとされています。

投資信託、国債、株式 最平26.2.25判決

ア.委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
イ.個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。
ウ.株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。

金銭 最平4.4.10判決

相続人は、遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管する他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできない。

不動産の分割方法

不動産の分割方法

遺産分割協議を進めていく中で厄介なものと言えば、不動産の分割方法をどうするかという問題があります。
まずは分割方法について見ていきます。

現物分割

遺産である不動産そのものを分け、各相続人が単独で所有権を取得する方法です。
複数の不動産を各相続人がそれぞれ取得することもあれば、1つの不動産を複数に分割して各相続人が取得することもあります。

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例えば、土地Aは長男、区分所有建物Bは長女、土地Aから分筆した土地Cは次女といった具合です。

代償分割

遺産である不動産が1つの建物であったり、分割すると土地の面積が小さくなる等して土地の利用価値が劣ったり、借地借家人がいたり、複数の人が同じ不動産を単独で相続したいなどの場合、ある相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して代償金(現金)を支払うという代償分割という方法があります。
この場合、対象となる不動産の価格設定とその代償金の算定、そして支払い能力の有無がポイントとなります。

換価分割

遺産である不動産を取得する相続人がいない場合や、代償金の支払い能力がある相続人がいない場合には、代償分割をすることはできないため、不動産を売却して換金し分割することになり、これを換価分割といいます。

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換価分割をすることについて合意ができれば、相続人が協議の上で第三者に任意売却することで換金し、その代金を相続分に応じて分配することになります。
ただ換価分割が適当な状況であるのに、任意売却に同意しない相続人がいる場合には,家庭裁判所が審判で競売を命じることになります。

共有分割

再建築不可能な土地等で不動産の買い手が現れる見込みが非常に低いなどの理由で、換価分割でも困難な場合等では、共有分割することになります。
共有分割とは、各相続人が相続分に応じて不動産を共有する方法です。
この共有状態を解消するには、交渉・共有物分割調停・共有物分割の訴えのいずれかによって解決を図る必要があります。

遺産分割審判における不動産の分割方法

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遺産分管轄協議が纏まらない場合、遺産分割調停に進むことになり、さらに調停が成立しない場合には遺産分割審判へと移行することになります。
遺産分割審判の場においてもなお当事者間の合意ができない場合には、家庭裁判所が適切と考えられる方法を決定します。

このとき、遺産分割の調停においても審判においても、まずは現物分割によって解決することができるかを検討し、それが困難であれば次に代償分割→換価分割→共有分割といった順番で検討されることになります。

遺産である相続財産が、分割不可能な不動産だけという事例が多々あります。
ここで競売による換価分割となった場合、不動産の資産価値が大きく目減りする場合があるので注意が必要です。
遺産分割協議の中で、相互に協力しあい積極的な共有分割するというのも賢明な妥協点かと思います。

遺産分割において家事審判で競売による価額分割が行われた事例

価額分割により取得した遺留分としての分配金は譲渡所得の収入金額に該当するとした事例

裁決事例集 No.22 – 29頁

遺産分割が家事審判に基づく競売による価額分割の方法により行われ、当該分割の対象となった土地の競売代金のうちから取得した遺留分相当額の金員については、相続財産として取得したものであり、譲渡所得の課税対象とはならない旨の主張について、譲渡所得の課税は、譲渡所得の基因となる資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産の所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものであり、当該金員については、家事審判に基づく競売による価額分割がなされたことによって、その値上がり益の清算が行われたものと認められるから、所得税法第33条第3項に規定する譲渡所得に係る収入金額に該当するものであり、したがって、原処分は相当である。

昭和56年6月1日裁決

特別受益の対象

特別受益とは?

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遺産分割協議の際に、相続が争続となる火種となる要因の一つに「特別受益」があります。

特別受益とは、特定の相続人が、被相続人から婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として生前贈与や遺贈などでもらっている特別な財産(利益)の事をいいます。

特別受益を主張することは簡単ですが、実は認められるには一定の状況がないと認められないケースが多いのも事実です。

特別受益者の相続分(民法903条)

  • 1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
  • 2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
  • 3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

特別受益者の範囲

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特別受益者に該当するか否かは、生前贈与等がなされた時点において、贈与等を受けた者が推定相続人であったか否かによって判断します。

被代襲者に対する生前贈与等

被代襲者は、生前贈与等を得た時点では推定相続人です。
代襲者は、そのような被代襲者の地位を代襲して取得するだけであって、被代襲者以上の相続による利益を取得することはできません。
したがって、被代襲者に対する生前贈与等は、代襲相続人の特別受益として算入すべきことになります。

代襲者に対する生前贈与

代襲原因発生前に贈与等がなされても、その時点では代襲者は推定相続人ではありません。したがって、その生前贈与は、他の第三者に対する贈与と同様の性質であるため、特別受益には含めまないことになります。
一方、代襲原因発生後に贈与等がなされた場合、その贈与等を受けた代襲者は、その贈与等を受けた時点で、推定相続人となっているため、生前贈与等は特別受益に該当するとされています。

推定相続人となる前の生前贈与等

例えば、養子縁組前に養子となるべき者に与えた金銭、婚姻前に妻となるべき者に与えた金銭などが挙げられます。
原則としては、推定相続人となる前の贈与は特別受益に該当しませんが、贈与が養子縁組 (婚姻) をするために、又は養子縁組 (婚姻) することが調ったことによりなされた場合等、推定相続人となった後の贈与と実質的に同視できる場合には、特別受益に該当します。

相続人の配偶者その他の親族に対する生前贈与等

特別受益の持戻しの対象となるのは、相続人に対する贈与に限られます。
したがって、相続人の親族に対して贈与があったことにより相続人が間接的に利益を得ていたとしても、相続人の親族自身は推定相続人ではありませんから、特別受益に該当しません。
事実認定の問題として、真実は推定相続人に対する贈与であるのに名義のみその配偶者としたというような場合は、実質的には相続人に対する贈与があったとみなして特別受益に該当する場合もあります。

特別受益の対象

民法903条の1項から、特別受益の対象となるのは次の3つです。

  • 1.遺贈・死因贈与

    →遺贈は相続時に遺言で与えられるものであり、常に特別受益となります。また贈与する人が死亡した時点で、事前に指定した財産を贈与する(事前に贈与を受けた側の承諾が必要)死因贈与契約も、常に特別受益となります。

  • 2.結婚または養子縁組のための贈与

    →持参金や嫁入り道具等の持参金や支度金など。ただし金額が少額で扶養の一部と認められるような場合は特別受益とはならず、結納金・挙式費用も通常は特別受益に含みません。

  • 3.生計の資本として受けた贈与

    →独立に際しての営業資金、住居の新築資金、高校卒業後の大学や専門学校に行くための学費などは特別受益に該当すると考えられていますが、子どもや配偶者など扶養して人に使ったお金、親が子の借金返済のために支払ったお金、生命保険金、高等学校までの教育費などは特別受益に含まれないのが通例です。

相続人の中で、被相続人から「特別受益の対象となる遺贈または贈与」を受けた者は、原則として特別受益の持戻しをする必要がありますが、相続人の間で話し合いがつかなければ、家庭裁判所に調停あるいは審判の申立てをすることになります。

特別受益を主張するには

実際に特別受益があったことを証明するためには、何を用意すれば認められやすいのでしょうか?

金融機関の残高証明書や取引履歴

被相続人の(できたら特別受益を受けた人のも)銀行等の残高証明書や取引履歴から、何年何月何日にいくら動いているかなどを把握し、受け取った側のそれと照らし合わせることで、証明できる可能性が高まります。

登記簿謄本

特別受益が不動産である場合、登記簿謄本からその不動産を取得した年月日及びその原因がわかるので、家を取得した事実は確実になります。
ただし、それが被相続人からの名義書換ならいいのですが、被相続人にお金出してもらって購入した場合、そのお金が被相続人の元から出していることがわからなくてはいけません。

特別受益を主張する前提として、まずは相続人の確定と相続財産の確定をきちんと行い、可能な限り、根拠となる証拠をしっかりと揃えたうえで、特別受益を考慮した遺産分割をするように他の相続人に対して求めていくことになります。話し合いでまとまれば、特別受益を考慮して各相続人の取得額を計算し、それを遺産分割協議書に反映させることになります。

話し合いがまとまらず、特別受益の有無について争いになった場合には、最終的には裁判所で、その有無について判断されます。

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裁判所が判断する上で重要なのは、何といっても証拠の有無です。
特別受益が法的に認められるには、きちんとした財産調査や根拠となる資料収集が非常に重要となります。
不動産の場合には、登記名義を調べることによって、贈与等がされたかどうか調べることは比較的簡単です。
また、現金の場合でも、被相続人の口座から、他の相続人の口座に振り込まれていて、記録が明確に残っている場合には、特別受益と認められる可能性が高くなっていきます。

しかし、預金をいったん引き出して現金に換え、それを贈与した場合や、もともと現金で残っていたものを贈与した場合、本来は他の相続人が支払うべき費用を被相続人が立て替えて支払い、そのままになってしまった場合には、証明が難しくなり、特別受益として認められないことも考えられます。

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預金を引き出して現金化してしまった場合には、生活費等の被相続人自身のための引き出しと区別がつかず、贈与税申告書等がなければ、その現金が特別受益であるとの証明は難しそうです。
また、被相続人が立て替えて支払った費用についても、それが被相続人も使っているような費用か、他の相続人のみに関係する費用か、記録上明確になっていないと証拠としては不十分です。

お金には名前がついていないため、混ざるとわからなくなります。

そして特別受益が問題になる際には、すでに生前贈与された時期から何十年も経っていて、記憶はあるが記録はないといった場合もよく見られます。そのため、特別受益の主張は、証拠上は認められない一方で、相続人間の感情的な対立をいたずらに高め、紛争を複雑化させるだけの結論になることもありますので、注意が必要です。

新戸籍に移記される身分事項

転籍により記載される身分事項

転籍前の戸籍に載っている身分事項の中で、転籍により新戸籍に移記(記載)される身分事項は次のように施行規則で決まっています。

重要な身分事項の移記(戸籍法施行規則第39条)

新戸籍を編製され、又は他の戸籍に入る者については、次の各号に掲げる事項で従前の戸籍に記載したものは、新戸籍又は他の戸籍にこれを記載しなければならない。

  • 一 出生に関する事項
  • 二 嫡出でない子について、認知に関する事項
  • 三 養子について、現に養親子関係の継続するその養子縁組に関する事項
  • 四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
  • 五 現に未成年者である者についての親権又は未成年者の後見に関する事項
  • 六 推定相続人の廃除に関する事項でその取消しのないもの
  • 七 日本の国籍の選択の宣言又は外国の国籍の喪失に関する事項
  • 八 名の変更に関する事項
  • 九 性別の取扱いの変更に関する事項
  • 2 前項の規定は、縁組又は婚姻の無効その他の事由によつて戸籍の記載を回復すべき場合にこれを準用する。

上記の認知・養子縁組の身分事項について、親側・子供側の転記され方を見てみます。

親側 子供側
養子縁組 養親の身分事項に記載された縁組事項は、戸籍が転籍その他の事由で編制替えになった場合には移記されません。 養子の身分事項に記載された縁組事項は、その後の戸籍に変動があっても養親と離縁しない限り移記されます。
認知 認知者(父親)の身分事項に記載された認知事項は、戸籍が転籍その他の事由で編制替えになった場合には移記されません。 被認知者(子)の身分事項に記載された認知事項は、転籍等の戸籍に編制替えや、婚姻、縁組等によって他の戸籍に入った場合、新戸籍または他の戸籍に移記されます。

ここで戸籍法施行規則第39条に記載れている身分事項の中で、認知・養子縁組・後見等をしたことがなく現在独身であれば、出生に関する事項だけが移記されることになります。

巷では、戸籍法施行規則を利用して、戸籍から離婚歴を消す方法というのが紹介されたりしています。
但しお子さんがいる場合は、お子さんの父・母の氏名が戸籍に記載されるため、転籍を行っても意味がありませんし、それにそもそもお子さんがいるわけですから・・・

戸籍から離婚歴を消す方法

結婚後に婚姻届を提出すると、一方が筆頭者、もう一方が配偶者になって夫婦の戸籍が新しく編成されます。
次に離婚すると配偶者は除籍され、名前の上に大きな×印が記載されます。
名前自体は消されずに、筆頭者の戸籍には誰といつ結婚したという記録が残ります。
離婚経験を俗にバツイチと言われているのも、この戸籍の×印に由来しております。

転籍の方法

除籍された配偶者が女性の場合、離婚届を出すと一旦は両親の戸籍に戻ります。
といっても戸籍が婚姻前の状態に戻るわけではありません。

婚姻して両親の戸籍から抜けたとき、子である自分の名前には×印がつけられています。
その×印の記録は消えずに、戸籍の末尾に新たに名前が追加されます。
そのため、離婚して戻ってきたことが一目でわかり、離婚歴として戸籍に残っている状態です。

次に両親の戸籍に戻った後、本籍地を現在の市区町村から他の市区町村に転籍した場合に限り、新しい本籍地の戸籍簿には離婚歴は引き継がれません(戸籍法施行規則第37条)。
つまり、自分の戸籍内にある離婚した相手についての記載や、親の戸籍内にある結婚前の自分についての記載が丸ごと消え、離婚歴がない戸籍になっているということです。

戸籍法施行規則第37条

戸籍法第百八条第二項の場合には、届書に添附した戸籍の謄本に記載した事項は、転籍地の戸籍にこれを記載しなければならない。但し、左に掲げる事項については、この限りでない。

  • 一 第三十四条第一号、第三号乃至第六号に掲げる事項
  • 二 削除
  • 三 戸籍の筆頭に記載した者以外で除籍された者に関する事項
  • 四 夫婦について、現に婚姻関係の継続するその婚姻に関する事項及び配偶者の国籍に関する事項
  • 五 その他新戸籍編製の場合に移記を要しない事項

注意点

離婚歴を戸籍謄本から消すことはできても、以下の2つから完全に消すことはできない点に注意が必要です。

  • 原戸籍(改製される前の戸籍)
  • 除籍謄本(戸籍内の全員が除籍されたり転籍して、戸籍簿から除籍簿に移された謄本)

旧本籍地に今まであった戸籍は、除籍という形で80年保存され、その除籍にはいつどこへ本籍を移したかというのが記載されていて、新本籍地の戸籍には、いつどこから転籍してきたのかが記載されています。

あくまでも現在の戸籍には記載されていないだけで、過去に遡って除籍謄本を取れば、今までのことは記載されたまま残っています。
遺産相続時には戸籍を遡って親族・血縁関係を明らかにする必要があります。
そのため自治体は、原戸籍や除籍簿を保存して過去の身分関係を確認できるようにしているのです。

取得すべき戸籍の範囲

相続人確定のための取得すべき戸籍の範囲

相続人を確定させるための戸籍の範囲は誰が相続人になるかによって異なりますが、被相続人の出生から死亡までが記載された期間の戸籍謄本は最低限必要となります。

婚姻による戸籍の編成

現行法の戸籍謄本では戸籍に記載される在籍者は「一の夫婦及びこれと氏を同じくする子」ごとになるため、子供が結婚した場合には、子供は両親の席から外れ、その子どもあるいは配偶者を筆頭者とする新たな戸籍が作られ、これを戸籍の編成といいます。

他に戸籍の編成事由として、どのようなものがあるのでしょうか?

転籍

戸籍の本籍地を移転した場合、転籍先が他の市区町村であれば転籍先で新たな戸籍が編成され、これを転籍といいます。

改製

法律や命令により従前の戸籍が新しい戸籍に編成され、これを戸籍の改製といいます。

ここで戸籍の編成によって、転記されない戸籍の情報があることを見てみます。

編成事由 新しい戸籍に移記されない情報
婚姻の場合 従前の戸籍に記載されていた父母や兄弟姉妹の情報
転籍や改正の場合 従前の婚姻・養子縁組・死亡等により除籍された人の情報

以上のことから、死亡時点だけではなく、編成事由があるたびにそれらを遡って過去の戸籍まで取り寄せない限り、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本は揃わないことになります。

戸籍調査の必要性

相続人を確定させるための戸籍調査の必要性

相続が発生した場合

  • 遺言書がある場合

    必ずしも相続人全員の同意が必要ではありませんが、相続人全員の同意があれば、遺産分割協議をすることも可能となります。
    また遺留分などの確認する必要があるため、相続人の確認が必要となります。

  • 遺言書がない場合

    相続人で遺産分割協議を行うことになりますが、遺産分割協議書の作成の際には、相続人全員の同意が必要となります。

戸籍を揃えてみて初めて分かること

相続人が誰か」ということは、戸籍を揃えてみて初めて分かることがあります。

  • 被相続人の先妻に子供がいた場合
  • 生前に正妻以外の子供を認知していた場合
  • 未亡人が再婚した場合、連れ子と再婚した夫が養子縁組をしていた場合

被相続人の預金

被相続人の葬祭費などの支出や相続手続きを円滑に進めるために、被相続人の預金を引き出せるようにしておきたい事があります。
この場合相続人の代表が口座を開設して、預金残高を代表口座に移管する場合も、相続人全員の同意が必要となります。

戸籍の種類と記載事項

遺産分割協議を始めるにあたって、最初に相続人調査を行います。
なぜなら遺産分割協議は、共同相続人全員の意思の合致によりなされなければなりません。
したがって戸籍上判明している相続人を除外してなされた遺産分割協議は無効となります(昭和32年6月21日、家甲第46号、最高裁判所家庭局長回答)。

また、包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するとされていますので(民法第990条)、包括受遺者を除外してなされた遺産分割協議も無効となります。

相続人から相続分を譲受けた者を除外してなされた遺産分割協議も無効と解されています。

相続人調査の基本は、被相続人の出生から死亡までの戸籍の収集から始まります。
まずは戸籍の種類から見ていきます。

戸籍の種類

種類 概要
戸籍 現在有効な戸籍
除籍 本来の事由により閉鎖された戸籍
原戸籍 改正が必要となるような戸籍制度の大変革(形式・形状)に有効な使用中の戸籍の書換(改正)をした時の改正原戸籍

昭和の原戸籍

現民法に伴う書換(昭和33年4月1日~)

平成の原戸籍

コンピューター化に伴う書換(平成6年~)

戸籍の記載事項

  • 氏名
  • 出生の年月日
  • 戸籍に入った原因及び年月日
  • 実父母の氏名及び実父母との続柄
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • 夫婦については、夫又は妻である旨
  • 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
  • 養子であるときは、養子の氏名及び養親との続柄
  • その他法務省令で定める事項

タワーマンションによる節税

タワーマンションによる節税の検証

なぜタワーマンションなのか?

  • 節税の優位性
  • 換金性
  • 投資利回りの安定性
  • 遺産分割が可能
  • ブランド性

上記のタワーマンションによる節税が優位である理由について検証してみます。

節税性の優位性

『節税の優位性』で言われている各住戸の土地持分が小さいという理由ですが、一般的に集合住宅と言われるマンション等であれば、戸建てよりは優位であり、アパート経営のように賃貸すれば節税効果が得られ、特にタワーマンションだからというわけではありません。

換金性

『換金性』については、一般的に不動産そのものは換金性がよくない資産と言われています。まして高層階ほどプレミア価格で取引され、高い価格で買っている物件をあえて安く投げ売り価格で売却するのであれば換金性は高いかもしれませんが、通常は売却して換金するには時間を要するのが普通かと思います。

投資利回りの安定性

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『投資利回りの安定性』ですが、そもそも利回りと言うのは、
毎月の賃料×12/購入価格×100=表面利回り(%)
((毎月の賃料-毎月の費用)×12-固定資産税等の費用)/購入価格×100=投資利回り(%)
毎月の費用=管理会社に支払う費用+修繕積立金
固定資産税等の費用=公租公課(固定資産税+都市計画税)+損害保険料+その他費用

と言う式になり、高いプレミア価格で購入した場合の投資利回りは、通常は悪くなるものです。
さらに、今後日本の人口が減少していく状況を考えると、毎年満室であるとは想定できず、利回りは悪くなる方向かと思います。
また最近のニュースから、下記に掲載したように政府・与党では『高層階の固定資産税と相続税を引き上げる』ことを検討されているようで、さらに投資利回りは低下するかと思います。

遺産分割が可能

『遺産分割が可能』まで理由に挙げられると、言葉を失います。
相続人の数だけマンションを買い続けるのでしょうか?
これは換金性のところでも述べましたが、一般的に不動産そのものは換金性がよくない資産であり、遺産分割しにくい資産と言えます。

ブランド性

この中でタワーマンションにこだわる理由としては、「眺望」や「希少性」を理由とした『ブランド性』くらいかと思います。
ただし都会のタワーマンションでは、ツインタワーと称するマンションが建設されたりで、10年前とは比較にならないくらいタワーマンションが乱立してきており、20階以上のタワーマンションでも近隣のマンションからお部屋が丸見えだったりして、眺望とかプライバシーとかのブランド力もだいぶ弱くなってきていると思います。
アパート・マンション経営による相続税対策でも述べましたが、実需として住まない限りは投資物件として考えて購入するのが賢明かと思います。

また最近の裁判例から『賃借人の迷惑行為を放置した賃貸人の不法行為責任が認められた事例』として、『東京地判 平17.12.14』なんていうのもアパート・マンション経営では注目する事例です。

「タワマン節税」けん制、高層階は増税へ 18年以降の新築で政府・与党方針

政府・与党は20階建て以上の高層マンションについて、高層階の固定資産税と相続税を引き上げる。
2018年以降に引き渡す新築物件が対象。一方で低層階の税負担を軽くする。高層階の部屋は取引価格が高いわりに税金が安く、富裕層の間では節税策として購入する動きが広がっていた。

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菅義偉官房長官は24日の記者会見で「実際の取引価格を踏まえた固定資産税の案分方法をいま検討している。今後の税制改正で検討する」と述べた。政府・与党は12月にまとめる与党税制大綱に盛り込むことを目指す。国や市町村の税収は現行制度を適用する場合と変わらないようにする見通しだ。

対象は大都市圏で増える「タワーマンション」と呼ばれる超高層物件で、20階建て以上を想定している。上層階に行くほど景観がよくなるため、同じ面積でも取引価格が高い。
一方で、こうした物件の固定資産税や相続税の算定基準となる「固定資産税評価額」は、マンション1棟の評価額を部屋ごとの床面積で割って計算している。階層による差はなく、同じ面積なら最上階と1階が同じ評価額となり、固定資産税や相続税も原則同額になる。

資産評価システム研究センターが全国の新築高層マンションの分譲価格を調べたところ、最上階の床面積あたりの単価は最下層階より平均46%高かった。
この結果、マンション高層階の部屋を買えば、現金のまま相続するよりも、相続税の金額も抑えやすい。富裕層しか使えない節税策として批判が高まっていた。固定資産税も取引価格の割に安くすむ。

総務省が検討している新しい評価額の仕組みは、高層マンションの中間の階は現行制度と同じ評価額にする一方、中間階よりも高層の階では段階的に引き上げ、低層の階では段階的に引き下げる。評価額5000万円の建物にかかる固定資産税は単純計算で年70万円。5500万円になれば固定資産税は年77万円に増える。


新しい税制の対象は18年以降に引き渡す新築物件に限定する。既存の物件は今の税制を適用する。現在の税負担を前提に高層階を購入した住民から強い批判が出るためだ。
20階建て以上の高層マンションは建築規制の緩和により、1999年から関東、東海、関西の三大都市圏で急増。すでに全国で1200棟を超えている。15年に相続税が引き上げられて高層マンション節税の人気が高まったことから、今回対策に乗り出すことにした。

2016/10/25 0:36日本経済新聞 電子版

「タワマン節税」はや下火? 当局が対抗策

相続税の負担を減らす目的で高層のタワーマンションを買うタワマン節税。2015年1月の相続増税を機に需要がかさあげされ「相続税バブル」と評されたが最近は下火になりつつある。首都圏の今年1月のマンション契約率は7年半ぶりの50%台に沈んだ。国税庁と総務省の二段構えの節税策封じがきっかけだ。

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高層階の評価額は平均で実勢価格の3分の1どまり(大阪市内のマンション群)

「新規のタワーマンション購入は去年より減った。国の規制強化を心配したお客からたくさん電話がかかってくる」。東京の都心部でマンション売買を仲介する営業マンは浮かない顔だ。
不動産経済研究所(東京・新宿)によると、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で1月に売り出された新築マンションの契約率は58.6%と前年同月より16.3ポイント下がり、市況の好不調の境目とされる70%を2カ月続けて割り込んだ。
契約率を押し下げたのは20階以上のタワーマンションの低迷だ。1月の契約率は32.0%となり過去10年で最低を記録した。2月以降は持ち直し傾向だが、タワマンの契約率が90%を超していた昨年夏ごろとは様変わり。価格高騰に加え「節税に使いにくくなったことが影響した」(不動産業界関係者)。

タワマン節税のしくみはこうだ。相続税の計算では、1戸あたりの土地の持ち分が小さいマンションは実勢価格より大幅に安く評価される。特に眺望の良い高層階は実勢価格が高いにもかかわらず低層階と同じ基準で評価されるため節税効果が大きい。現金のまま相続するよりも税負担は格段に軽くなる。<br>
「タワーマンション節税」という言葉は不動産仲介を手がけるスタイルアクト(東京・中央)の登録商標だ。沖有人同社社長が14年に出したタワマン節税の指南書は昨年1月からの相続税の非課税枠縮小や最高税率の引き上げでヒット作になった。富裕層向けの節税セミナーには昨年1年間で約2000人が詰めかけた。
だが、沖氏でさえ最近はタワマン節税のセミナーで受講者を集めにくくなった。3月に東京・丸の内で開いたセミナーでは、空き地を高く売る方法など幅広い話題に触れる形にした。関西でも状況は同じ。大阪市内の不動産仲介会社の男性は「『相続税対策になる』とのうたい文句は控えるようにした」と言う。

市場を揺さぶる当局の税制の変化。発端は14年秋に国税庁がひそかに実施した調査だ。全国の20階以上の住戸343物件を調べたところ、評価額は平均で実勢価格のわずか3分の1。「行きすぎだ。看過できない」。分析にあたった松山清人資産評価企画官は昨年秋、全国各局の担当者を集めた。実勢価格と評価額が乖離(かいり)しているケースや取得、相続、売却の時期が不自然に近い場合は追徴課税するよう指示した。
昨年11月には総務省の関係団体が開いた固定資産税の制度改正を議論する有識者検討会で、委員の大学教授が提案した。「タワーマンションは階数で補正をかける方法もあるのではないか」

相続税の算定基準となる「評価額」は総務省令で定めている。現在はマンション1棟の評価額を各戸の所有者がそれぞれの床面積で均等に分割するため、階層や日当たりの条件によって差がつかず一律だ。同省はこれを高層階ほど評価額が上がるように見直す検討に入った。早ければ18年にも実施される見通しだ。
ただ、国税庁の指示は追徴課税するかの基準が曖昧で、総務省の制度改正も詳細が決まっていない。税制改正への警戒感が先行している段階だ。

スタイルアクトの沖氏は「ルールが多少変わっても節税になることに変わりはない」と指摘する。「早く明確にしてくれたほうがお客に売り込みやすくなる」と語る不動産大手の幹部もいる。
15年1月からの相続増税は、タワマン節税などの新手の節税策を生み出してきた。タワマン節税封じに納税者はどう動くか。攻防はヤマ場にさしかかった。(江渕智弘)

2016/3/30 3:30日本経済新聞 電子版

アパート経営による相続対策

アパート・マンション経営による相続税対策

貸家を建てた事業用の宅地の評価額

『借地借家による宅地評価』で記載した貸家建付地の相続税評価額の計算式を再掲載します。
貸家建付地の相続税評価額=自用地としての価額x(1-借地権割合x借家権割合x賃貸割合)

  • 借地権割合

    →借地権割合は、地域ごとに路線価図により定められています。路線価図にA~Gの希望で定められており、以下の表の割合で借地権割合が決まっています。

記号
借地権割合 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30%

例えば、路線価図に225Dと記載のある道路に面した土地については、一平方メートル当たりの価額を千円単位で表示し、この場合225,000円/㎡で、借地権割合D=60%であることを示しています。

  • 借家権権割合

    →借家権割合は、全国一律で30%となっています。

  • 賃貸割合

    →例えば、アパートの部屋が10部屋あって、そのうち6部屋が賃貸で貸していて残り4部屋は空室であるような場合にはこの賃貸割合は10分の6、つまり60%となります。
    土地の上に立っている建物のうち、何%を貸しているかということを表します。厳密には貸している部屋の床面積で計算を行います。貸している部屋の合計面積が40㎡、貸していない部屋の合計面積が160㎡であった場合には、賃貸割合は200分の40となり、賃貸割合は20%ということになります。

例として次のような前提条件の土地について、貸家建付地評価を行ってみます。

  • 更地(土地)の評価額:10,000万円
  • 部屋数8部屋で満室の貸アパートの敷地。
  • 借地権割合の評価「C」の路線に面している。

貸家を建てなければ土地の評価額は1億円となります。
貸家を建てた場合の土地の評価額は、借地権割合は路線価図上の記号がCということで70%となり、借家権割合は一律30%のため、各地補正等を省略すると、10,000 x(1 – 0.7x0.3)=7,900万円となります。

貸家を建てるだけで、土地の評価額を21%下げることになります。

このことから分かるように、貸家建付地の評価は自用地としての価額よりも低くなり、何もない土地にアパートやマンションが建設されると、更地状態の場合やマイホームを建てた場合よりも相続の際の土地の評価額が下がります。
このため、相続税の節税に効果的であると言われています。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の特例

個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地(アパートの敷地)等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の、一定の割合を減額します。

相続の開始の日が「平成27年1月1日以後」の場合

相続開始の直前における宅地等の利用区分 要件 限度面積 減額割合
被相続人等の事業の用に供されていた宅地等 貸付事業以外の事業用の宅地等 特定事業用宅地等に該当する宅地等 400 80%
貸付事業用の宅地等 一定の法人に貸し付けられ、その法人の事業(貸付事業を除く)用の宅地等 特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等 400 80%
貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200 50%
一定の法人に貸し付けられ、その法人の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200 50%
被相続人等の貸付事業用の宅地等 貸付事業用宅地等に該当する宅地等 200 50%
被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 特定居住用宅地等に該当する宅地等 330 80%

上記のように、貸付事業用の宅地(アパートの敷地)等は、小規模宅地等についての相続税の課税価格の特例により、事業用の土地として限度面積200㎡で50%減額が受けられる可能性があります。

例として次のような前提条件の土地について、貸家建付地評価を行ってみます。

  • 200㎡更地(土地)の評価額:10,000万円
  • 部屋数8部屋で満室の貸アパートの敷地。
  • 借地権割合の評価「C」の路線に面している。

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更地のまま相続した場合、土地の評価額は1億円となります。
更地にアパートを建てた場合の土地の評価額は、借地権割合は路線価図上の記号がCということで70%となり、借家権割合は一律30%のため、各地補正等を省略すると、10,000 x(1 – 0.7x0.3)=7,900万円となり、さらに小規模宅地の特例により50%評価減となり、7,900万円×50%=3,950万円となります。

貸家を建てるだけで、土地の評価額を60.5%に下げることが出来ます。

小規模宅地の特例という優遇措置を受けるためには、事業用又は居住用でなければならないため、ただの空き地(更地)の場合には優遇措置は受けることができません。

『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』はこちら>>

相続税対策で借入をしてアパート経営をする

借入してアパート経営するメリット

相続税対策を行うために、借金をしてアパート経営を行うという相続対策を聞くことがあります。
自己資金でアパートを購入する場合も、お金を借りてそのお金でアパートを購入する場合にも、土地の評価額を下落させることが可能です。

2,000万円借金をした場合 お金を借りた場合、現金2,000万円借入金が2,000万円となります。
相続税の金額を計算する場合、この時点で財産(お金)2,000万円-債務(借入金)2,000万円=0円となるため、この時点では相続税の計算には何も影響を与えません。
2,000万円借金をしてアパートを購入する場合 お金を借りてアパートを建築した場合、アパート2,000万円、借入金が2,000万円となります。
この場合、アパートは2,000万円で購入したにもかかわらず評価額としては、2,000万円×(1-30%)=1,400万円に評価されます。
その結果、アパートの評価額1,400万円となり、借入金は2,000万円となるため、相続税の評価額は1,400万円-2,000万円となり、△600万円を相続税の計算上マイナスすることが可能です。

借入してアパート経営をするデメリット

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2016/08/25 テレビ朝日【羽鳥慎一モーニングショー】でセレブな街が“空き家”だらけ「みんないなくなった」というニュースが放送されていました。
東京の郊外では新築空き屋物件としてたくさん建設されているようで、相続対策と称して収益性が低い場所で沢山のアパートの建設ラッシュがあり、入居率が50%程度で未入居のままの物件が多いことから新築空き屋物件というネーミングついたようです。

空室率10~20%程度でローンの返済を計画して収益物件としてアパートを建設したとしても、空室率が50%となると借入の返済が家賃収入で追い付かない状況が続き、資金繰りが悪くキャッシュフローはマイナスとなり、持ち出しになっているのではないかと思います。
相続対策のため借り入れをしたのはいいのですが、せっかく購入したアパートを借金のために手放しかねません。

また家賃保証として一括借り上げ等を謳って転貸借をしている不動産会社もありますが、契約の欄をよく見ると2~4年ごとに転貸料の見直しの項目がしっかり記載されているのが普通です。
そしてほぼ更新ごとに転貸賃料を下げる交渉をしてきます。中には元の賃貸の家賃は変わらずとも値下げ交渉していくる不動産会社もあり、実際タチが悪い不動産会社が多いのが実情です。

遠方の不動産だと、どうしても管理等を地場の業者だったり、マンションの管理会社の系列の不動産会社に委託することになりますが、実際きちんと管理されていないのが実情かと思います。
入居者が出入りする度に原状回復のための修繕を行ったりするのですが、その見積もりが管理する不動産会社の中には異常に高かったりする場合もありしてトラブルも時々発生しているようです。
私が所有している東京の物件などは、その原状回復に関する見積もりも高さに驚き、大阪から部材を運んで修繕した事も有りました。

またアパート経営の収入は事業所得となり、一般的には大家業という事業を営んでいる事になります。
そのため家賃保証として一括借り上げ等の転貸借契約もプロ対プロの契約の扱いとなるため、不動産会社と締結する転貸借契約の内容に不利があったとしても、消費者を保護するための法律関係の適用は難しい場合があるようです。

結論:相続税対策としてアパート経営をすべきなのでしょうか?

お気に入りの物件だったり、賃貸需要が高く収益性の良い物件以外は、自分で管理が出来ほど遠く土地勘のない場所だったり、あまり賃貸需要が低く収益性の悪い物件などは、人口減少が継続している日本において空室となるリスクを考慮すると、借入してまでの不動産の購入は止めておいた方が無難だと思います。

このコラムを書いた2日後の2016/9/30 3:30発信の日本経済新聞の電子版の記事を紹介します。

2016.09.30追記:アパート空室率悪化、泣くオーナー

nikkei160930

人口減の日本でなぜか賃貸アパートが増えている。2015年の相続税増税でアパート経営が節税策として注目され、それを追い風に建設請負業者が売り込みをかけているからだ。家賃保証などでオーナーの負担は軽いとして受注を伸ばすが、需給は崩れ、空室率は過去最悪の水準に達する。目算が狂ったオーナーは悲鳴を上げる。

■節税対策で脚光

「空室リスクは覚悟していたけど、こんなにも早く出るなんて」。千葉県白井市の男性公務員(43)は肩を落とす。相続した土地にアパートを12年に建設した。2階建てで総戸数は8戸。今年で築4年、最寄り駅から徒歩10分と条件は悪くない。だが、今年は一時、5戸が空室になった。

母親が亡くなるとほどなく大手の建設請負業者が訪れ、相続した土地にアパート建設を勧めてきた。9千万円という建設費にためらったが、担当者は「当社が全室借り上げ、入居者も集めます」と提案書を差し出した。
試算では家賃収入は年660万円。業者の取り分を差し引いて600万円強の収入が35年間続くという。銀行からの借り入れは必要だが、試算で示された月30万円程度の返済には十分。地銀からの融資も決まり、建設に踏み切った。
現実は甘くなかった。当初こそ業者から月50万円が振り込まれたが、今は40万円弱。家賃収入は空室率によって最低保証額まで引き下げられる契約だからだ。今後、定期的な契約更新で金額が変わる可能性も残る。

居住人口の少ない土地でのアパート経営に無理はなかったか。オーナーの妻(35)は後悔の念を抱きながら敷地の草むしりをする。専門業者に任せるお金はないからだ。
国土交通省によると、7月の住宅着工の伸び率は持ち家が前年比6.0%だったのに対しアパートなど貸家は11.1%。大幅増の背景にあるのは相続税対策だ。更地にしておくより借金をしてアパートを経営した方が税金が安く済むからだ。

その波に乗ったのがサブリースと家賃保証を売り物にするアパート建設請負業者だ。建設だけでなく、一括借り上げして入居者を集め、手数料を除いた家賃をオーナーに支払う。こんな提案で、大東建託やレオパレス21といった大手が続々とアパートを建設している。大東建託の16年3月期の売上高は8期連続で過去最高を更新した。

■トラブルも発生

業界が活況に沸く一方、トラブルが発生している。「空室を理由に提案通りの家賃が支払われていない」。不動産コンサルティングの青山財産ネットワークスの高田吉孝執行役員の元には、こうした相談が月に数件寄せられる。
国交省は9月から業者に対し契約時には、将来の家賃が変動する可能性があると説明するよう求め始めた。業者側は「契約書面ではリスク要因を強調している」(レオパレス21)、「賃料改定があり得ることを説明をした上で、本人の署名なつ印を頂いている」(大東建託)と適切に対応していると主張する。

言い分が分かれる中、アパートの需給は悪化を続ける。不動産調査会社のタス(東京・中央)によると首都圏の空室率は15年夏ごろから急上昇。最も高い神奈川県は7月に36.66%と過去最悪を更新し、16カ月連続で悪化した。適正水準の上限30%を大幅に上回る。

無秩序なアパート建設に行政も危機感を抱く。埼玉県羽生市では1年ほど前にアパートの建設地域を制限した。しかし、局地的に規制しても焼け石に水だ。首都圏全体でみた場合は「当面は空室率は改善しないだろう」(タスの藤井和之氏)。

空室増のあおりを受ける不動産管理会社は対策を余儀なくされている。
6万戸の賃貸住宅を管理する東急住宅リース(東京・新宿)。空室が増えれば収入減につながる。そこで7月からオーナーに従来より3割程度安く改修できる新提案を始めた。大学再編で居住学生が減少する相模原市の管理会社は入居者専用の食堂設置をオーナーに呼びかける。

空室率が悪化してもなお増え続けるアパート。建設業者にとって数少ない「成長分野」を狙って、住友林業など戸建て住宅メーカーもアパート事業に力を入れる。
相続税対策を狙うオーナー、アパートの建設代を得たい業者。空室が発生した場合、誰が責任を取るのか。直視しないまま、今もアパートは増え続ける。(岩本圭剛)

借地借家による宅地評価

借地権と貸宅地の評価

借地権の評価

  • 借地権

    借地法に規定する建物の所有を目的とする地上権及び賃借権のこと

借地権は借地法によって、その存続期間が保証され、またその期間満了時には原則的に賃借期間の更新が認められており、また建物の譲渡に伴ってその借地権も有償で譲渡することができます。
したがって、借地権の設定は、事実上土地の一部である土地の収益権の部分的譲渡に該当する行為に当たるもの考えられ、借りている側は借りている分の利益を得ていると考えれます。

借地権の評価=自用地としての価額x借地権割合

貸宅地の評価

  • 貸宅地

    地上権又は借地権の目的となっている宅地のこと

具体的には、土地の所有者が借地権者に賃貸して直接使用、収益させている状態にある宅地をいいます。
この場合には、土地所有者はその宅地に対する使用収益権は著しくげんたいするを借地権は借地法によって、その存続期間が保証され、またその期間満了時には原則的にこととなるため、その事情を考慮することとしています。

貸宅地の評価=自用地としての価額x(1-借地権割合)

借地権は借りている側の評価、貸宅地は課している側の評価となるため、それぞれの借地権割合で自用地としての価額を按分することになります。

貸家建付地の評価

貸家建付地の相続税評価

貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。
したがって、具体的には土地所有者がその宅地の上にある自己所有者の建物を賃貸していることから、その建物の敷地となっていること宅地を借家人に間接的に使用収益させている状態にある宅地です。
第3者に賃貸している建物が建っている場合では、建物に居住している賃借人の借家権が生じているため、相続税評価を行う上では、居住者の借家権部分を一部考慮することで、評価額を減額することができる規定となっています。“すぐに売れない”=“換金価値が少し下がる”と言う考えに基づいています。

貸家建付地の評価=自用地としての価額x(1-借地権割合x借家権割合x賃貸割合)

  • 借地権割合

    →借地権割合は、地域ごとに路線価図により定められています。路線価図にA~Gの希望で定められており、以下の表の割合で借地権割合が決まっています。

記号
借地権割合 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30%

例えば、路線価図に255Cと記載のある道路に面した土地については、一平方メートル当たりの価額を千円単位で表示し、この場合255,000円/㎡で、借地権割合C=70%であることを示しています。

  • 借家権権割合

    →借家権割合は、全国一律で30%となっています。

  • 賃貸割合

    →例えば、アパートの部屋が10部屋あって、そのうち6部屋が賃貸で貸していて残り4部屋は空室であるような場合にはこの賃貸割合は10分の6、つまり60%となります。
    土地の上に立っている建物のうち、何%を貸しているかということを表します。厳密には貸している部屋の床面積で計算を行います。貸している部屋の合計面積が40㎡、貸していない部屋の合計面積が160㎡であった場合には、賃貸割合は200分の40となり、賃貸割合は20%ということになります。

貸家建付地評価の具体例

次のような前提条件の土地について、貸家建付地評価を行ってみます。

  • 地積(面積):100㎡。
  • 部屋数5部屋の貸アパートの敷地。
  • 5部屋の広さは同じで、このうち3部屋は賃貸しているが2部屋は空室。
  • 路線価図上、200Cの路線に面している。

「自用地とした場合の価額」は、各地補正等を省略すると、100㎡×200千円=2,000万円となります。
次に借地権割合は、路線価図上の記号がCということで70%となります。
そして、借家権割合は一律30%。
賃貸割合は、5分の3、つまり60%。
以上のような前提条件の土地について、貸家建付地評価を行うと
2,000 x(1 – 0.7x0.3x0.6)=1,748万円となります。

※借家人の有する宅地等に関する権利=自用地としての価額x借地権割合x借家権割合x賃貸割合

使用賃借による相続、遺贈又は贈与があった場合の土地の財産評価

使用貸借と賃貸借の違いは、その収益が対価を伴わず無償でなされる点にあります。

使用貸借に該当する場合 借りているものについて通常必要とされている費用に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎない場合
使用貸借に該当しない場合 無償であっても、それに代わる経済的利益の授受のある場合

借地権の設定が使用貸借契約に基づくものである場合においては、借地人の有する使用収益権の価額をゼロとして取り扱うため、贈与税の課税関係は生じません。

家屋の評価

家屋の評価単位は、原則として1棟ごとの家屋ごとに評価します。

自家家屋の評価

job_ooya家屋の評価=固定資産税評価額x倍率(常に1.0)

固定資産税評価額は、家屋課税台帳又は家屋補充課税台帳に登録されてている基準年度の価格又は基準年度の価格に比準する価格をいいます。

貸家の評価

貸家の評価=自用家屋の価額x(1-借家権割合x賃貸割合)

借家権の目的となっている家屋に価額は、自用家屋としての評価額から借家権の価額を控除した金額によって評価します。

自用家屋=家屋の利用権+家屋の所有権
借家権割合=家屋の利用権/自用家屋

宅地の財産評価

宅地の財産評価

相続税の大きなウェートを占めると思われる宅地における相続税の財産評価について確認します。
遺産分割協議とかで不動産の価格をいくらで評価するかによって、特に相続人のうちの1人が共有している不動産を現物取得し、他の相続族人が金銭による代償分割という遺産分割方法する場合などは要注意です。

1物4価

一つの土地には、次の異なる4つの価格が成立するとされており、これを1物4価といいます。

  • 公示価格
  • 相続税評価額
  • 固定資産税評価額
  • 取引価格(時価)

地価と言われる取引価格は、売主と買主の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、公示価格は正常な価格として国土交通省が公示する価格を指し、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格を3月に公示されます。
その他の相続税評価額固定資産税評価額は、税金の額を決めるときの基準となるもので、毎年1月1日時点の価格が、7月に国税庁から公表されます。

地価公示、相続税路線価、固定資産税評価の相互関係

公示価格を100とすると、概ね相続税路線価を80、固定資産税評価額を70といった価格で均衡化が図られています。

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遺産分割時における相続不動産の時価評価

相続、遺贈または贈与により所得した財産の価額は、相続税評価額ではなく、取得の時における不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる取引価額(時価)で評価しなければならないことになっています!
そして、その財産の価額から控除すべき債務(住宅ローン)がある場合は、その時点のローン残高により課税価格は決まります。

相続税の課税価格

推定時価5,000万円の宅地の贈与を受けた場合、ここから住宅ローンの3,000万円と贈与税の基礎控除110万円を差し引くと、課税価格は1,890万円になります。

遺産分割時の評価額

相続人のうちの1人に相続によって共有状態になっている不動産を単独で相続させ、他の相続人は金銭による代償分割した場合、その相続財産の基礎となる不動産の評価額は時価でおこう事になります。
これを時価ではなく、相続税評価額や固定資産税評価額を元に評価され、遺産分割をした場合、代償分割された金額は多くの場合は過小に評価され、不公平に分配されることになります。
このように不動産については、不動産鑑定評価を活用されてるなりして適正な時価を求めれることが肝要です。

不動産の価額
遺産分割 取引価額(時価)
相続税の納付 相続税評価額
固定資産税の納付 固定資産税評価額

相続税評価額の評価方式

宅地の価額は、1画地の宅地(利用者の単位となっている1区画の宅地をいう)ごとに評価します。そして宅地及び宅地の上に存する権利の評価方式には、次の2つの方法があります。

路線価方式 倍率方式
概要 市街地的形態を形成する地域にある宅地(都会の方式) 市街地的形態を形成する地域にある宅地以外の宅地(田舎の方式)

路線価方式による評価

その宅地の面する路線に付された路線価を基とし、がけ地や間口が狭かったり、奥行きが長かったり使い勝手の悪い宅地に関しては、その宅地の形状に応じた調整を行った金額に地積を乗じて評価することになります。

評価額=路線価x地積(実際の地積)

路線価とは、位置、形状等がその路線に面する標準的な画地1㎡当たりの価額(単位:千円)として、国税局長が評定したものです。
評価しようとする宅地が標準的なものと異なる場合には、各種の調整率によってその路線価を修正することになります。

路線価方式による評価の修正

  • 一方のみが路線に接する宅地

    →路線価x奥行価格補正率x地積

  • 正面と側方に路線がある宅地

    →(正面路線価x奥行価格補正率+側方路線価x奥行価格補正率x側方路線影響加算率)x地積

  • 正面と裏面に路線がある宅地

    →(正面路線価x奥行価格補正率+側方路線価x奥行価格補正率x二方路線影響加算率)x地積

  • がけ地等

    →路線価x奥行価格補正率xがけ地補正率x地積

  • 正面と側方に路線があるがけ地

    →(正面路線価x奥行価格補正率+側方路線価x奥行価格補正率x側方路線影響加算率)xがけ地補正率x地積

  • 不整形地

    →路線価x奥行価格補正率x(1-不整形地としての減価割合(100分の40の範囲内))x地積

  • 間口が狭小な宅地

    →路線価x奥行価格補正率x間口狭小補正率x地積

  • 奥行が長大な宅地

    →路線価x奥行価格補正率x奥行長大補正率x地積

  • セットバックを必要とする宅地の評価

    →利用制限が無いものとして算定した路線額-セットバックの対象となっている部分に対応する価額x70%

  • 奥行が長大な宅地

    →路線価x奥行価格補正率x奥行長大補正率x地積

私道の場合の路線価方式による評価の修正

私道を利用している者 私道の評価額
宅地の所有者のみ 自用地としての価額
上記以外の特定の者 自用地としての価額x30/100
不特定多数の者 評価しない

倍率方式による評価

倍率方式は、固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとに定める倍率に乗じて計算した金額によって評価方式です。

評価額=固定資産税評価額x倍率

固定資産税評価額は、土地課税台帳または土地補充課税台帳に登録されている基準年度の価額又は基準年度の価格に比準する価格をいい、地方税法等の特例措置によって固定資産税の税額計算の基礎とされる課税標準ではありません
また倍率方式では、固定資産税評価額が決定される際に宅地の形状等が考慮されているので、路線価方式のように各種の補正率は用いません

数次相続による相続税

配偶者の相続税額の軽減

配偶者の税額の軽減とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。(相続税法19条)

  • 1億6千万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

この軽減措置を受ける注意としては、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象とはなりません。
ただし、相続税の申告書又は更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、税額軽減の対象になります。

配偶者の相続税の軽減措置は有利なのか?

例)死亡時の本人(夫)の相続財産10,000万円・妻の相続財産4,000万円、相続人は妻と子1人の場合

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一次相続

まず夫が死亡して、妻と子1人が相続した場合
妻と子の法定相続割合は、それぞれ50%となります。

  • 基礎控除の金額= 3,000万円+600万円×2= 4,200万円
  • 課税遺産額= 10,000万円-4,200万円= 5,800円
  • 各人の法定相続分= 5,800万円÷2= 2,900万円

    この時の税率15%、控除額は50万円

  • 各人の相続税= 2,900万円×15/100-50万円= 385万円
  • 相続税の総額= 385万円×2= 770万円

妻の相続割合における一次相続時の相続税(万円)

相続税の総額×按分割合=算出相続税となるので、相続税の総額770万円を妻と子の実際の相続割合で按分して、各々の相続税を算出します。

妻の相続割合 一次相続合計
相続財産 相続税 相続税 相続税
100% 10,000 0 0 0
90% 9,000 0 77 77
80% 8,000 0 154 154
70% 7,000 0 231 231
60% 6,000 0 308 308
50% 5,000 0 385 385
40% 4,000 0 462 462
30% 3,000 0 539 539
20% 2,000 0 616 616
10% 1,000 0 693 693
0% 0 0 770 770

二次相続

次に妻が死亡して、子1人が相続した場合

  • 基礎控除の金額= 3,000万円+600万円×1= 3,600万円
  • 課税遺産額= 夫からの相続額+4,000万円-3,600万円
概要 改正後
1000万円以下 10%(控除額 0万円)
3000万円以下 15%(控除額 50万円)
5000万円以下 20%(控除額 200万円)
1億円以下 30%(控除額 700万円)
2億円以下 40%(控除額 1,700万円)

妻の相続割合における二次相続時の相続税(万円)

  • 2次相続税額= 課税遺産額×相続税率/100-控除額
  • 数次相続税額= 1次相続税額+2次相続税額
妻の相続割合 一次相続税 二次相続 相続税合計
相続財産 課税遺産額 相続税率 控除額 相続税
100% 0 14,000 10,400 40% 1,700 2,460 2,460
90% 77 13,000 9,400 30% 700 2,120 2,197
80% 154 12,000 8,400 30% 700 1,820 1,974
70% 231 11,000 7,400 30% 700 1,520 1,751
60% 308 10,000 6,400 30% 700 1,220 1,528
50% 385 9,000 5,400 30% 700 920 1305
40% 462 8,000 4,400 20% 200 680 1,142
30% 539 7,000 3,400 20% 200 480 1,019
20% 616 6,000 2,400 15% 50 310 926
10% 693 5,000 1,400 15% 50 160 853
0% 770 4,000 400 10% 0 40 810

数次相続による相続税

配偶者の相続税額が軽減されたとしても、数次相続では節税したことにならない

上記の例は、夫が亡くなり妻と子供が相続した後、妻が亡くなり子供1人が相続する場合の数次相続の相続税のシミュレーションです。
上記の表より数次相続による相続税の合計額としては、妻と子供が相続する時に必ずしも配偶者の相続税額の軽減を利用したとしても、数次相続した場合の相続税額として有利にならないことが分かります。

ただ上記の例では、夫が死亡してから妻が死亡するまでの間で、贈与を行うなどの相続税対策を考慮しておりませんので、これらの相続税対策を行うことで、配偶者の相続税額の軽減を利用することも有効な手段となる場合も有ります。
男性と女性の平均寿命や、各家庭におけるさまざま事情を考慮し、1次相続における適正割合を決められることが数次相続による相続税の節税には有効となります。

生前贈与と特別受益

贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

相続などにより財産を取得した人が、被相続人からその相続開始前3年以内(死亡の日から遡って3年前の日から死亡の日までの間)に贈与を受けた財産があるときには、その人の相続税の課税価格に贈与を受けた時の贈与財産の価額を加算します。
また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。(相続税法19条)

1.加算する贈与財産の範囲

被相続人から生前に贈与された財産のうち相続開始前3年以内に贈与されたものです。3年以内であれば贈与税がかかっていたかどうかに関係なく加算します。
したがって、基礎控除額110万円以下の贈与財産や死亡した年に贈与されている財産の価額も加算することになります。

2.加算しない贈与財産の範囲

被相続人から生前に贈与された財産であっても、次の財産については加算する必要はありません。

  • 贈与税の配偶者控除の特例を受けている又は受けようとする財産のうち、その配偶者控除額に相当する金額
  • 直系尊属から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課税の適用を受けた金額
  • 直系尊属から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のうち、非課税の適用を受けた金額

3.控除する贈与税額

控除する贈与税額は、相続税の課税価格に加算された贈与財産に係る贈与税の税額です。ただし、加算税、延滞税、利子税の額は含まれません。

特別受益の持ち戻し

相続発生3年以内の贈与財産は相続財産として持ち戻して計算することになります。言い換えれば相続が発生した時から3年を超えた生前贈与については、既に贈与税を納付して被相続人の財産から切り離されているものですから、相続税を計算する為の課税対象には含まれません。

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しかし民法上の処理は異なり、遺産分割の際にはそれらの財産を含めて相続分を計算しなければなりません。
このとき該当する贈与や遺贈の事を「特別受益」といい、それらを遺産に含める事を「特別受益の持ち戻し」といいます。

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1.特別受益の持ち戻し

例えば、死亡時の相続財産1,200万円、相続人は子2人(長男と長女)、相続人の子の長男が2,000万円の生前贈与を受けていた場合

民法903条1項により。相続財産は3,200万円として計算されます。これをみなし相続財産といいます。
相続人が2人なので、1人あたり相続分は1,600万円ずつとなります。

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しかし現実には相続財産が1,200万円しかないため、生前贈与を受けていない方の相続分は1,200万円だけということになります。
民法903条2項により、相続できるはずだった足りない400万円を、生前贈与を受けた相続人に対して支払ってもらうような請求はできません。

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2.持ち戻しの免除

ここで民法903条3項には、持ち戻しの免除という制度があります。
被相続人が遺言で、贈与(生前贈与、遺贈)した金額に対して、「相続のときに持ち戻さなくてよい」という意思表示することができます。
この場合、生前贈与の持ち戻しがされません。

現実に残っている1,200万円なので、1人600万円ずつ相続することになります。
2,000万円の生前贈与を受けている相続人は、トータル2,600万円をもらうことになり、一方は600万円しかもらえない結果となります。
特別受益が相続分を超えていたとしても、他の相続人に超えていた分を支払う必要はありません。

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3.遺留分

しかし特別受益が他の相続人の遺留分を侵害していた場合、他の相続人による遺留分減殺請求によって、特別受益者は遺留分を侵害した分を支払う事になります。
被相続人が「特別受益を財産に加えない」という意思を遺言で表示している場合は、特別受益を持ち戻さない事も可能ですが、それでも遺留分の制限は受けることにはなるのです。

みなし相続財産から計算すると800万円が遺留分となります。
持ち戻しを免除された結果、600万円しか手元に残らなかった相続人は、遺留分に足りない200万円を生前贈与を受けた相続人に請求できることができます。

特別受益者の相続分(民法903条)

  • 1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
  • 2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
  • 3.被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

特別受益の価値

特別受益の価値は「相続が発生した時点での価値」となります。2,000万円の土地を生前贈与で受けとた場合、相続発生時にその土地が3,000万円になっていたら、その土地の価値は3,000万円となります。

生活費及び教育費の贈与

従来からの非課税規定

贈与税の非課税財産(相続税法21条の3)

  • 次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。

    一 法人からの贈与により取得した財産
    扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの
    三 宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの

  • 以下略

扶養義務者(民法877条)

  • 1.直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
  • 2.家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
  • 3.前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

親が子供や孫の生活費・教育費を支出しても、扶養義務者への贈与税は非課税となります。
また別枠で毎年110万円贈与することができ、これも非課税となります。

扶養義務者からの生活費及び教育費の贈与

これらの扶養義務者に対する贈与税の非課税枠を利用して、本人と同居している子の長男夫婦家族への生活費及び教育費の贈与について考えてみます。

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  • 1.本人と同居している長男夫婦が支払うべき生活費及び教育費として、月30万円を負担します。
    毎年360万円・10年間で3600万円で無税で贈与できます。

  • ya

  • 2.長男及び嫁・孫・長女・次女の計5人に対して毎年110万円を贈与します。
    毎年550万円・10年間で5500万円で無税で贈与できます。

  • ya

  • 3.上記の贈与を組み合わせると、毎年(360万円+550万円=910万円)を無税で次世代の相続人に承継させることが出来ます。
    したがって10年実行すると9,100万円、20年実行すると1億8,200万円が非課税となります。

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、30歳未満の方(以下「受贈者」)が、教育資金に充てるため、金融機関等との一定の契約に基づき、受贈者の直系尊属(祖父母など)から以下の要件のときに、信託受益権又は金銭等の価額のうち1,500万円までの金額に相当する部分の価額については、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することにより贈与税が非課税となります。

  • 信託受益権を付与された場合
  • 書面による贈与により取得した金銭を銀行等に預入をした場合
  • 書面による贈与により取得した金銭等で証券会社等で有価証券を購入した場合(以下「教育資金口座の開設等」といいます)

この制度を利用するには、上記のような教育資金口座の開設等が必要となります。
また教育資金の支払いを行った場合は、金融機関等の営業所等に領収書等の提出を行う必要があります。

教育資金贈与の非課税制度のパンフレット

相続放棄と医療費

相続放棄しても、病院側から医療費を請求され支払う必要がある場合があります。
まずは相続放棄の効力からみていきます。

相続放棄

相続の放棄の効力(民法939条)

  • 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

「初めから相続人とならなかったものとみなされる」ため、相続放棄した相続人の直系卑属には代襲相続権(民法第887条)は発生しません。
また相続放棄の効果には絶対効があるため、その効果を第三者にも対抗できます。

被相続人の債権者からの請求

被相続人に多額の借金がある場合、相続放棄の手続きを家庭裁判所に申述することができます。
被相続人の債権者から返済を請求されても、家庭裁判所から交付を受けた相続放棄申述受理証明書のコピーを債権者に送付すれば、請求されなくなります。

このように相続放棄した場合は、被相続人の借金による弁済を免れることができるのですが、以下のような場合においては支払い義務が生じることがあります。
ここで注意して頂きたいことは、どれも相続の問題になっていないという事です。

同居している配偶者への医療費の請求

被相続人である夫の借金が多額であったため、配偶者である妻が相続放棄をした場合でも、入院していた際の医療費は日常家事債務に該当するため、相続人である妻は連帯債務者として支払い義務が生じます。

日常の家事に関する債務の連帯責任(民法761条)

  • 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。

日常家事債務の範囲(裁判例)

  • 夫婦の一方が賃貸借契約を締結した借家の家賃
  • 夫婦が暮らす家の水道光熱費・テレビ受信料
  • 生活必需品の購入費
  • 子供の教育・養育費
  • 家族の医療費
  • レジャー費・被服費・化粧品代

被相続人の保証人への医療費の請求

入院が決まると患者に「入院誓約書」というA4用紙1枚の書面が渡され、これに同意した上で、患者本人と保証人に署名・押印を求められます。

入院誓約書

  • 医師と看護師の指示に従い治療に専念します。
  • 入院料や治療費を支払います。
  • 患者の身元は保証人が引き受けます。

この「入院誓約書」に保証人として同意した場合、被相続人が死亡して相続放棄したとしても相続の問題とはならず、保証人として入院費の請求を拒むことはできまません。

入院時の保証人としての法的な意味

  • 身元保証人
  • 連帯保証人
  • 身元引受人

いずれも「入院患者に万が一のことがあったら責任をもって対応する人」という点では同じです。

医師の応招義務

「入院するときは保証人を付けなければならない」という法律はなく、医師は法律で「保証人がいない」という理由のみで、患者の入院を拒むことはできません。

医師法19条

  • 診療に従事する医師は、診察治療の求めがあつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

この場合の診療を拒否する正当な理由とは?

厚生労働省による通達と解釈

  • 診療報酬が不払いであっても拒否できない。

    最初から支払う意思が無いとみなされる場合は、診療を拒否できる場合があります。

  • 診療時間外でも急患については拒否できない。

    「被告の診療時間外で応急体制になかったこともあり救急病院での受信を被告が勧めたとこと原告も救急車を呼んだ経緯等から,被告には診療を拒否したとは認められない」(東京地方裁判所平成17年11月15日)

  • 標榜する診療科目以外でも応急処置等できる範囲のことはしなければならない。

    標榜する診療科目以外である場合には,応急処置以上の診療を行うべきとは言えませんし,緊急を要しない場合には診療科目以外であることを理由に拒否することは許される場合があります。

  • 疲労や病気を理由とする場合には,診療が不可能といえる程度であることを要し,単なる経度の疲労を理由に拒否できない。

    医師の健康状態が診療によって悪化する場合や,患者に感染する可能性のある病気である場合には拒否することも許される場合があります。

身元不明の患者

個人情報の保護に関する法律

例えば、身元不明の患者の携帯から緊急に親族などの身内に連絡を取る必要があるとき、本人の生命に危険が及ぶような場合であれば、個人情報保護法の利用目的の適応除外規定に該当します。

さらに身分証明書をまったく持っていない、携帯電話等連絡先手段も持っていない、そのような時は市町村の行旅病人担当課へ連絡し「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づいて対応することとなります。

個人情報の保護に関する法律

(利用目的による制限)

  • 第十六条 個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、前条の規定により特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない。
  • 2 個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。
  • 3 前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。

    一 法令に基づく場合。
    二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
    三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。
    四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

行旅病人及行旅死亡人取扱法

行旅病人及行旅死亡人取扱法(こうりょびょうにん および こうりょしぼうにん とりあつかいほう)は、行旅人が病気や死亡をした場合に所在地の市町村が救護するべきことなどを定める明治32年3月28日公布された現行法です。

行旅死亡人は「行旅病人及行旅死亡人取扱法」、身元のわかる遺体は「墓地、埋葬等に関する法律」(墓地埋葬法)が適用されます。

行旅病人及行旅死亡人取扱法第1条2項

  • 住所、居所もしくは氏名が知れず、かつ、引取る者がいない死亡人は行旅死亡人とみなす

住居にて発見された遺体(いわゆる孤独死)や、遺留品中に身分証明書があった場合でも、本人と断定することができなければ、行旅死亡人として取り扱われます。

行旅病人及行旅死亡人取扱法第7条

  • 行旅死亡人がいるときはその所在地の市町村が、その状況や容貌、遺留物件などの本人の認識に必要な事項を記録した後で、その遺体の火葬、埋葬をしなければならない

墓地または火葬場の管理者はこの火葬や埋葬を拒むことができないとされています。

行旅病人及行旅死亡人取扱法第9条

  • 行旅死亡人の本人の認識に必要な事項を官報等に公告しなければならない

行旅死亡人は該当する法律である行旅病人及行旅死亡人取扱法により、死亡推定日時や発見された場所、所持品や外見などの特徴などが市町村長名義にて、詳細に官報に公告して掲載されます。
行旅死亡人となると地方自治体が遺体を火葬し遺骨として保存、官報の公告で引き取り手を待つ事となります。

行旅病人及行旅死亡人取扱法と墓地埋葬法に基づく行政の対応

  • 行旅病人の救護(病院への通院・入院等)
  • 行旅死亡人及び葬祭執行者がいない死亡人の葬祭の執行

身元のわかる遺体の取り扱い

自治体は墓地埋葬法の規定に基づいて対応します。

墓地埋葬法9条

  • 死体の埋葬又は火葬を行う者がないとき又は判明しないときは、死亡地の市町村長が、これを行わなければならない。
  • 二 前項の規定により埋葬又は火葬を行つたときは、その費用に関しては、行旅病人及び行旅死亡人取扱法(明治三十二年法律第九十三号)の規定を準用する。

墓地埋葬法3条

  • 埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。

墓地埋葬法4条

  • 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。
  • 火葬は、火葬場以外の施設でこれを行つてはならない。

墓地埋葬法21条1号

  • 左の各号の一に該当する者は、これを千円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

    一 第三条、第四条、第五条第一項又は第十二条から第十七条までの規定に違反した者
    二 第十八条の規定による当該職員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者、又は同条の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者

身元不明の患者への対応

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身元不明の患者が危篤状態のとき、家族への連絡手順

1.本人の携帯電話などから連絡先を探します。
(個人情報であるが、緊急事態であるので個人情報保護法の利用目的の適用除外項目にあたり問題はないです。)
2.警察へ連絡し協力を依頼(事件性の確認)し、市町村の福祉課にて対応して頂きます。(親族の捜索も市町村役場にて行います。)

身元不明の患者が入院費用が未払いのままで死亡した場合

1.とりあえず身寄りの無い方として病院長が届出人として市区町村に死亡届けを提出することになります。
2.同時に申請されれば、葬祭を行われた方(病院等の施設長、自治会長、民生委員等)に葬祭費が支給されます。
3.申請時、喪主様のわかる書類(領収書、会葬礼状など)が必要です。

身元不明人が死亡した場合の多くは、死亡後の遺体への早急な対応があるため、身寄りの無い方として行旅病人及行旅死亡人取扱法に準じた処理が市区町村と協議され処理されているようです。

相続財産法人による清算

もし相続人が誰もいなかった(相続人が全員相続放棄した)場合は、相続財産管理人の選任を申し立てて、同管理人から弁済を受けることになります。

行旅病人及行旅死亡人取扱法による清算

行旅病人及行旅死亡人取扱法に基づき、市区町村が身元判明まで入院費用を立て替え払いします。

  • 行旅病人の場合は、同居の家族、職業、住所などを聞き、支払い能力があるかどうかを調べます。
  • 行旅死亡人であれば、遺留品から活用できるものがないか調べます。
  • 今回の事件の請求をします。本人に支払が出来ないときは親族に請求します。
  • 行旅病人及行旅死亡人取扱法に基づき、所在地の市区町村が身元判明まで入院費用等を立て替えます。
  • 親族がいなければ、市区町村は都道府県費用を請求します。
  • 親族がいても支払い拒絶が正当な理由であれば、市区町村は都道府県に費用を請求します。

本人や親族に費用を請求してはみるものの、実際には費用弁償をきちっと行ってくれることは稀で、というかほとんど無いのが現実です。そのため、結局は都道府県の負担となってしまいます
行旅死亡人については、葬儀も行って火葬をし遺骨もあるのだが、基本的に親族がその遺骨の引き取りを拒否するケースが多く、「生前から付き合いがなかった」とか、「借金など様々な面で迷惑を掛けられて縁を切った」とか、そういった話を聞かされることがよくあるようです。
とはいえ、遺骨は埋葬しなければならないので最終手段として無縁仏として無縁墓地に葬られることになります。

医師法

医師法1条

  • 医師は、医療及び保健指導を掌ることによつて公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もつて国民の健康な生活を確保するものとする。

このように国民の保健上極めて重要な役割を担う医師については、医師の任務・免許・試験・臨床研修・業務・医師試験委員・罰則などについて、医師法という法律で規定しています。

医師法24条

  • 医師は、診療をしたときは、遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない。
  • ニ 前項の診療録であつて、病院又は診療所に勤務する医師のした診療に関するものは、その病院又は診療所の管理者において、その他の診療に関するものは、その医師において、五年間これを保存しなければならない。

医師法には守秘義務を直接規定していませんが、情報を適切に管理することが求められています。
守秘義務としては刑法に以下の定めがあります。

刑法134条1項

  • 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

刑法135条(親告罪)

  • この章の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

適切な医療を施すためには患者からの通常は人に知られたくないような事実の開示が不可欠ですが、そのためには開示した事実が医師から他に漏らされることがないという医師に対する信頼が必要であることから医師には、守秘義務が課せられています。

医師法21条

  • 医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

医師法には、届出義務が規定されています。
この届け出るべき「異状死」とは何かについて、日本法医学会は平成6年5月に「異状死ガイドライン」を作成ました。

異状死ガイドライン

  • 異状死体を「確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の全ての死体」と定義

上記のように、医師法では守秘義務・届出義務が課せられ、これに違反した医師には、罰則が規定されています。

医師法33条2項1号

  • 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。

    第六条第三項、第十八条、第二十条から第二十二条まで又は第二十四条の規定に違反した者

最後に医療関係者向けの検索サイトとして、鹿児島県地域医療・福祉情報サイトに身寄りのいない人の支援内容(死亡時など) にも詳しく記載されていました。