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年間110万円までの贈与は得なのか?

年間110万円までの贈与の検証

相続人は子供1人で相続財産4億5千万円の場合において、10年間・毎年100万円贈与した場合と毎年1,000万円贈与したあと、3年後に相続が発生した場合における贈与税と相続税の合計額を比較検証してみます。

毎年100万円贈与した場合と毎年1,000万円贈与した場合の贈与税額

年数 100万円/年
贈与した場合
100万円/年
贈与時の贈与税
1,000万円/年
贈与した場合
1,000万円/年
贈与時の贈与税
1年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
2年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
3年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
4年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
5年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
6年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
7年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
8年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
9年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
10年目 100万円 0円 1,000万円 177万円
3年後相続開始
時の合計額
1,000万円 0円 10,000万円 1,770万円
  • 毎年100万円した場合の総贈与税→→0万円
  • 毎年1,000万円した場合の総贈与税→→1,770万円

10年間・毎年100万円贈与した場合と毎年1,000万円贈与したあと、3年後に相続が発生した場合の相続税額

相続人は子供1人で、相続財産4億5千万円の場合の基礎控除額は、3,000+600=3,600万円となります。

相続財産3億円超~6億円以下の相続税の税率と控除額

税率 控除額
概要 50% 4,200万円

毎年100万円贈与した場合の相続税額

総課税価格=遺産総額-贈与額=45,000-1,000=44,000万円
相続税額=(総課税価格-基礎控除額)×税率-控除額=(44,000-3,600)×50/100-4,200=16,000万円

毎年1,000万円贈与した場合の相続税額

総課税価格=遺産総額-贈与額=45,000-10,000=35,000万円
相続税額=(総課税価格-基礎控除額)×税率-控除額=(35,000-3,600)×50/100-4,200=11,500万円

  • 毎年100万円した場合の相続税額→→16,000万円
  • 毎年1,000万円した場合の相続税額→→11,500万円

年間110万円までの贈与が有利とは限らない!

10年間・毎年100万円贈与した場合と毎年1,000万円贈与したあと、3年後に相続が発生した場合の贈与税と相続税の合計額

  • 毎年100万円した場合の税額合計=相続税額+贈与税額=16,000+0=16,000万円
  • 毎年1,000万円した場合の税額合計=相続税額+贈与税額=11,500+1,770=13,270万円

上記の検証より、年間110万円までの贈与が必ずしも有利とは限りません。
相続税の適用税率に応じた適切な贈与をすることが重要です!

平成27年施行の相続税改正

平成27年1月1日以降開始の相続から、相続税が増税となりました。
ここでは大きく改正されたポイントによって、どれくらい増税になるのかを検証します。

基礎控除額の改正

改正前 改正後
概要 5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数) 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例:親が死亡し法定相続人が子供2人で、相続財産の合計が5,000万円の場合

改正前の基礎控除の計算方法

  • 基礎控除の金額 5,000万円+1,000万円×2 = 7,000万円
  • 相続財産5,000万円 < 基礎控除額7,000万円

    ⇒基礎控除が相続財産を上回るので相続税の納税なし。

改正後の基礎控除の計算方法

  • 基礎控除の金額 3,000万円+600万円×2 = 4,200万円
  • 相続財産5,000万円 > 基礎控除額4,200万円

    ⇒相続財産が基礎控除を上回るので相続税の納税が発生。

税率の改正

概要 改正前 改正後
1000万
円以下
10%(控除額 0万円) 10%(控除額 0万円)
3000万
円以下
15%(控除額 50万円) 15%(控除額 50万円)
5000万
円以下
20%(控除額 200万円) 20%(控除額 200万円)
1億円
以下
30%(控除額 700万円) 30%(控除額 700万円)
2億円
以下
40%(控除額 1,700万円) 40%(控除額 1,700万円)
3億円
以下
40%(控除額 1,700万円) 45%(控除額 2,700万円)
6億円
以下
50%(控除額 4,700万円) 50%(控除額 4,200万円)
6億円
50%(控除額 4,700万円) 55%(控除額 7,200万円)

各法定相続人の所得金額が2億円超から3億円以下の部分は40%から45%へ引き上げられ、6億円超の部分は50%から55%へ引き上げられました。

相続税の増加額

さて上記の基礎控除額の改正と税率の改正により、どれくらい増税になるのかを検証します。
例:親が死亡し法定相続人が子供2人で、相続財産の合計が50,000万円の場合

改正前の相続税の総額の計算方法

  • 基礎控除の金額= 5,000万円+1,000万円×2= 7,000万円
  • 課税遺産額= 50,000万円-7,000万円= 43,000円
  • 子供1人の法定相続分= 43,000万円÷2= 21,500万円

    この時の税率40%、控除額は1,700万円

  • 子供1人の相続税= 21,500万円×40/100-1,700万円= 6,900万円
  • 相続税の総額= 6,900万円×2= 13,800万円

改正後の相続税の総額の計算方法

  • 基礎控除の金額= 3,000万円+600万円×2= 4,200万円
  • 課税遺産額= 50,000万円-4,200万円= 45,800円
  • 子供1人の法定相続分= 45,800万円÷2= 22,900万円

    この時の税率45%、控除額は2,700万円

  • 子供1人の相続税= 22,900万円×45/100-2,700万円= 7,605万円
  • 相続税の総額= 7,605万円×2= 15,210万円

上記より親が死亡し法定相続人が子供2人で、相続財産の合計が50,000万円の場合、改正後15,210万円-改正前13,800万円=1,410万円の増税となることが分かります。

改正後の相続財産による増加額例

課税価格 相続税
改正前 現行 差額
5,000万円 0円 80万円 80万円
1億円 350万円 770万円 420万円
3億円 5,800万円 6,920万円 1,120万円
5億円 1億3,800万円 1億5,210万円 1,410万円
10億円 3億7,100万円 3億9,500万円 2,400万円

贈与契約と暦年贈与信託

贈与の定義

贈与(民法549条)

  • 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

    片務・諾成・無償の契約

贈与は片務契約であり、同時履行の抗弁権(民法533条)などの双務契約に関する適用はありません。
贈与は諾成契約なので、口約束でも有効となりますが、「書面によらない贈与」は当事者はいつでも履行されていない部分のみ撤回が可能となります。
撤回により契約は遡及的に無効となります。

暦年贈与信託

暦年贈与信託契約の場合、贈与者から「贈与の依頼書」を提出して頂くことで「書面による贈与」となり贈与者の方から一方的に撤回することができなくなります。
また受贈者から「受贈の確認書」を頂くことで、「片務契約」として有効となります。

暦年贈与信託の特長に「贈与契約書の作成や振り込みなどの、面倒な贈与手続きは不要」と記載されたりしているものがありますが、実は見て頂くとわかるとおり簡易的に手続きを踏んでいる形になっています。

  • 同時履行の抗弁(民法533条)

    双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

連年贈与と暦年贈与信託

連年贈与の怪

国税庁のタックスアンサー

ずいぶん前のことですが、毎年定期的に贈与(連年贈与)し続けると遡って贈与税が課税されるような事を税理士さんに聞いたことがありました。
その元ネタは、国税庁のタックスアンサーだったようです。

  • Q1「毎年、子に100万円ずつ10年間にわたって贈与することとしましたが、1年間では基礎控除額である110万円以下となるため、贈与税の申告納税は不要ですか。」

    A1「1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、契約をした年分に、有期定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして贈与税の申告が必要となります。」(相法24、相基通24-1)
    国税庁のタックスアンサー

有期定期金に対する贈与と判断されると

平成26年から5年間、毎年4月1日に100万円ずつ贈与していた場合を例としてみてみます。

  • 単年度で見ると
  • 基礎控除【110万円以下】なので、贈与税なし。

  • 有期定期金の贈与
  • 平成26年4月1日に500万円の贈与契約があり、それの5年間の分割払いと判断されると、
    有期定期金500万円に対する贈与税として、平成26年に一括で53万円の支払いとなる。

このように有期定期金と判断されないように、毎年贈与系契約を作成しましょう!

以前に税理士さんからは、連年贈与に見られないように毎年贈与額を変更するか、時々110万円を超えて申告して下さいとアドバイスされましたが、例えば行政書士に毎年贈与契約書を作成して頂き、双方の署名押印とその行政書士による検印等で証書を残し、かつ現実に銀行振り込みで証拠を残す方が確実かと思います。

最近の金融機関の商品

ここで最近の金融機関の商品を調べてみると、贈与手続きを代行して年間110万円までの贈与税の非課税枠を利用した商品が提供されていました。

暦年贈与信託「おくるしあわせ」(三菱UFJ信託銀行)

  • 贈与契約書の作成や振り込みなどの、面倒な贈与手続きは不要。(※1)
  • 贈与取引の記録が残ります。複数の方への贈与や複数年にわたる贈与などの場合も安心です。(※2)
  • 毎年当社からお知らせするので、贈与の機会を忘れることはありません。
  • 元本保証:元本に万一欠損が生じた場合も当社が補てんします。
  • 管理手数料無料:ご契約時やご契約後の管理手数料は無料です。

    暦年贈与信託「おくるしあわせ」

この商品の特徴を見てみると、前述の「連年贈与は贈与税が遡って課税」される話は?と不思議に思って調べてみました。

連年贈与対策

調べていくと、国税庁のタックスアンサーに書いていた話を誤って解釈した人達が「連年贈与は贈与税が遡って課税」のフレーズを一人歩きさせていた!?と言う内容の記事が目に入ってきました。

塩川税理士事務所の連年贈与の誤解(なぜ皆が間違えているんだろう)
» くわしくはコチラ

さらに読んでみると「毎年の判断で法的に有効な贈与を行えば、結果的に同時期同額であってもその都度の贈与契約となるのでこれを連年贈与として課税されることはない」という事が書かれていました。

  • 毎年の判断

    毎年贈与契約をする。(※3)

  • 有効な贈与

    贈与契約書を作成して双方が署名捺印を行う。(※4)
    受贈者が、贈与財産を管理する。

確かにこれらの連続贈与対策についても、かつて税理士さんに同じようなアドバイスを受けた事がありました。
ここで改めて上記の暦年贈与信託の特長の※1の「贈与契約書の作成は不要」という点に注目すると、連年贈与対策として有効だと言われていた※3の「毎年贈与契約する」、※4の「贈与契約書を作成する」と言った手法は、実は不要だったのでは?と言う新たな疑問が出てきました。
もちろん※2により、暦年である契約には間違いはありません。
前述の「国税庁のタックスアンサー」の例と何が違うのでしょうか?

暦年贈与信託

三菱UFJ信託銀行「おくるしあわせ」の専用窓口に問い合わせてみたところ、次の事が分かりました。

  • 毎年の判断

    毎年贈与する方に「贈与の依頼書」にて贈与したい方と贈与額を確認を行う。

  • 有効な贈与

    贈与を受ける方から「受贈の確認書」を頂く。
    受贈者が、贈与財産を管理する。

暦年贈与信託は、贈与する側の口座から贈与を受ける口座へ財産贈与する手続きを、第3者である信託銀行が手助けをしているといった商品であることが分かります。

また暦年贈与信託の「おくるしあわせ」の<本商品における税務上のご留意事項>に「贈与する方と贈与を受ける方との間であらかじめ約束されている場合は、贈与税の申告が必要となります。」と記載されているとおり、贈与者と受贈者の間で予め契約等を交わさない事が重要です。
連年贈与として扱われない重要なポイントとなります。

暦年贈与信託は、信託銀行である第3者を介在させて、毎年贈与者と贈与額を決め、受贈者に確認し、通帳等で贈与の記録が残るようにし、贈与者と受贈者の間で予め贈与契約をしていなければ、連年贈与と受けれらにくい工夫している商品というがわかります。

さらに税理士法人の見解と東京国税局の回答も得るあたり、流石だと感じました。

ただ私は信託銀行を使わなくても、似たような仕組みは個々の事例に合わせて対応できるのかと考えています。
その仕組みは、後日の機会にでもアップしたいと思います。

※この内容は平成26年2月現在のもので、今後の税制改正や今後確定する法令や通達等により、異なる課税関係が生ずることがあります。
※行政書士である私は一般的な税務の話しか出来ませんので、個別の具体的な税務上の取り扱いの詳細は、相続税に詳しい税理士さんや所轄税務署などにご確認ください。

行政書士を英訳すると

「行政書士」の英訳として何がいいのか、ホームページや名刺を作る際に気になったので調べてみました。

Administrative scrivener

Googleで「行政書士 英訳」を検索すると「Administrative scrivener」と表記されました。
Administrative=「行政上の」、scrivener=「代書人」という意味で、行政書士に代理権が付与されていなかった時代ならば、この表記がピッタリでしたが、特定行政書士元年である今年(2016年)は「代書屋」だった時代からは生まれ変わるときだと思います。

Certified Administrative Procedures Legal Specialist

ウィキペディアでは「Certified Administrative Procedures Legal Specialist」と表記されていました。
Certified=「公認の」、Administrative=「行政上の」、Procedures=「手続き」、Legal=「法律に関する」、Specialist=「専門家」いう意味で、法務省が進めている日本法令外国語訳として2013年9月から行政書士を表記しているようです。

かなり長いフレーズですが、このフレーズからAdministrativeの単語が無いとすると、法律に関する手続きの専門家といった意味となり「行政」書士らしからぬ感じとなります。ただProceduresの単語であえて「手続き」の専門家を強調する必要もない気がしますが、行政書士会の各支部で英文表記として使用されているようです。

Gyoseishoshi Lawyer

日行連では平成16年度から「日本行政」で使用してきたようです。
Gyoseishoshi=「行政書士」、Lawyer=「法律家」という意味ですが、行政書士をローマ字表記としたことで英文として伝わりにくいかと思います。

Administrative Lawyer

Administrative=「行政上の」、Lawyer=「法律家」という意味で、Lawyerを広く法律家としてとらえるのなら意味が伝わりやすく短くてイイ感じがします。

Administrative Solicitor

ohno

TBSの「特上カバチ」という行政書士を題材した番組の中に出てくる大野行政書士事務所の扉のガラスにAdministrative Solicitorと記載されていました。
(※画像は切り取って加工しない条件でTBSに使用願中です。)

kabachi

米国でもイギリスやアイルランドと同様、弁護士が”barrister”(法廷弁護士)と“solicitor”(事務弁護士)とに区別されていたようですが、”barrister”と“solicitor”の区別は米国では19世紀後半頃に廃止されていて、現在米国では”barrister”(法廷弁護士)や“solicitor”(事務弁護士)という職業は存在していないようです。

当事務所名の英文表記

今年(2016年)は「特定行政書士」元年でもあり、業務によっては仕事の性質上類似する面があり伝わりやすい気がします。
私が行政書士資格を取得するときに励みに見ていた番組でもあり、その後に講演を聞かせてもらった事もあってすごく馴染みが深く、このフレーズを使わせて頂きたく思いました。
そして今後の行政書士の社会的地位の確立と職域拡大を念願して、”Administrative-Solicitor”と「造語」で表記することにしました。
いろいろなご意見があるかと思いますが、どうぞ暖かい目で見守り下さい。

ホームページをリニューアルしました

行政書士パーソナル事務所の遺言法務.com(ゆいごんほうむドットコム)のサイトへアクセス頂き誠にありがとうございます。
本日2016年2月24日、当事務所のホームページをリニューアルしました。
皆さまにとって使いやすく見やすいホームページとなるようにサイト構成やサイトデザインを刷新しました。
今後とも、何卒宜しくお願い申し上げます。